警察から突然の呼び出しが。逮捕されたらどうなる? 弁護士が解説
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平成31年3月、俳優がコカインを使用していたとして逮捕されたニュースは、社会に大きな衝撃を与えました。この事件では、自宅に警察官がやって来て家宅捜索するとともに、その俳優に対して任意同行を求めました。そして、その後に行われた尿検査で薬物反応が出たため、麻薬取締法違反の容疑で逮捕されています。このように、逮捕は、警察が家に来た時点で必ずなされるものではありません。本コラムでは、罪を犯した場合どのように逮捕されるのかについて弁護士が詳しく解説します。
1、なぜ警察は呼び出しをするのか
警察からの呼び出しが、必ずしも逮捕を意味するとは限りません。
呼び出しには、「犯罪の被疑者だから、話を聞いて容疑を固めたい」「事件の参考人だから、話を聞きたい」「逮捕された人の身元を引き受けてもらいたい」といったさまざまな目的があります。以下で詳しく見ていきましょう。
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(1)犯罪の被疑者として話を聞き、容疑を固めたいから
逮捕したいけれど、逮捕状を請求するには証拠が足りないなどという場合に、事情を聞くことで証拠を見つけるヒントにしたり、自白させて逮捕したりという目的で呼び出されることがあります。
事件の被疑者として出頭を求めた場合には、警察は「黙秘権の告知をしなければならない」と刑事訴訟法で決まっています。これは、被疑者が自分に不利になるようなことは言わないようにしたり、一切の発言を拒否したりすることもできるという決まりです。このような権利が認められているのは、自白したことを根拠に逮捕されたり、裁判で有罪と認定するための証拠とされたりする場合もあるなど、取り調べにおける発言は重要な要素になるからです。
このように、警察から呼び出されて黙秘権の告知があった場合、被疑者として取り調べを受けている可能性があります。 -
(2)事件の参考人として話を聞きたいから
被疑者としてではなく、事件を捜査するうえで必要な情報を得るため、呼び出される場合もあります。この場合は、事件の参考人として呼び出されているため、逮捕を目的としているのではないでしょう。
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(3)身元引受人になってほしいから
身元引受人として、逮捕された被疑者などを監護してもらう目的で、呼び出される場合もあります。被疑者となっても、在宅捜査などで済むため逮捕しないようなケースや、保釈をした場合の逃亡防止のために、身元引受人に引き取ってもらうのです。
2、逮捕には、3つの種類がある
警察から被疑者として呼び出され、犯罪の容疑が固まったとしても、実は必ず逮捕されるというわけではありません。逮捕は、逃亡や証拠隠滅の恐れがある場合になされるものです。
また、一定期間人の身体を拘束するという手続きのため、行政機関である警察が自由に行えるものではありません。逮捕は、刑事訴訟法にてその要件が定められており、種類は通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の3つあります。
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(1)通常逮捕
通常逮捕は、いわゆる一般的な逮捕形態です。被疑者の元に警察官がきて、疑いのかけられている犯罪や逮捕日時が書かれた逮捕状を示し、逮捕されます。逮捕状は、裁判所が逮捕する必要があると認められた場合に出されます。
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(2)現行犯逮捕
現行犯逮捕は、その場で明らかに犯罪を行った犯人だと分かる場合に逮捕されるケースです。たとえば、財布が入ったカバンを奪ったとして、被害者から追いかけられている人を取り押さえることがこのケースに当たります。この場合は、警察官だけではなく、被害者や一般の人も逮捕することができ、逮捕状がなくてもかまいません。
ひったくりだけではなく、ケンカをしていて相手を殴り、血を流しているような場合、傷害罪に該当し、現行犯逮捕される場合などもあります。 -
(3)緊急逮捕
緊急逮捕は、街中で警察官が指名手配の容疑者を見つけた場合などに逮捕することを指します。この場合にも逮捕の際に逮捕状は必要ありません。逮捕状の発行は、警察職員が裁判官に請求する手順を踏むため、時間がかかります。指名手配の容疑者を見つけた場合には、その場で身柄を確保しなければ、逃してしまいます。そのため、緊急的に逮捕できるとする規定があるのです。もっとも、逮捕後直ちに逮捕状の請求をし、逮捕状が発せられない場合は、釈放しなければなりません。
以上の通り、逮捕には3つの種類があります。任意同行を求めた警察官が、逮捕状を持参していなくても、取り調べののち、逮捕される場合もあります。こうしたことから、被疑者として出頭を求められた場合には、自分に不利な供述をしてしまうことなどを防止するために、早めに弁護士に相談することをおすすめします。
3、逮捕後の流れ
逮捕されたあとには、どのような手続きが行われるのでしょうか。ここでは、一般的な逮捕後の手続きの流れをみていきましょう。
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(1)捜査取り調べ
逮捕される前や逮捕された後に行われる取り調べです。警察職員などから事件当時の状況についてさまざまなことを聞かれます。そこで、言いたくないことは言わなくても構いません。なお、逮捕される前は任意同行になりますので、出頭すること自体を断ることもできます。他方、逮捕された後は、出頭すること自体は拒むことができません。
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(2)逮捕
捜査の状況を踏まえて逮捕状が請求され、裁判官が逮捕の必要性があると判断した場合には、逮捕状が発行されます。この逮捕状に基づき、被疑者は身柄拘束されてしまいます。逮捕後は、取り調べを受けるなどし、事件現場について調べる実況見分などに立ち会う場合もあります。
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(3)送致
逮捕から48時間以内に検察官に送致されるかどうか検討されます。送致された場合は、検察官による取り調べを受けることになります。
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(4)勾留
検察官は取り調べをしたうえで、勾留請求をするかどうか決定します。検察官として勾留が必要だと判断した場合は、裁判所に対して勾留請求がなされます。この勾留請求は、送致されてから24時間以内にしなければなりません。勾留請求が裁判所に認められると勾留が決定します。勾留期間は原則10日ですが、やむを得ない事由があると認められる場合には延長することができ、延長が認められると最大20日間勾留されることになります。
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(5)公訴提起(起訴)
検察官は勾留期間における取り調べの結果などをもとに、起訴するかどうか決定します。検察官が起訴は必要ないと判断した場合には、釈放されます。他方で、検察官が起訴すると判断した場合、勾留されたまま起訴されることもありますが、在宅起訴となる場合もあります。
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(6)裁判手続き
起訴されると刑事裁判手続きに移行します。起訴後、被疑者は被告人と呼ばれることになります。在宅起訴の場合は、裁判期日の際には、裁判所に出頭する義務を負います。
裁判では有罪・無罪の判断だけでなく、有罪の場合は刑罰の軽重についても判断がなされ、言い渡されます。判決に納得がいかない場合は上級審に裁判を求めることも可能です。手続きを経たのち判決が確定し、有罪の場合は刑罰を受けることになります。
4、逮捕権を持っているのは警察だけではない
逮捕できるのは、警察官だけと思いがちですが、先ほどみた現行犯逮捕の場合には、警察官ではない一般の人でも逮捕することができます。常に警察官を待っていては、取り逃してしまうリスクがあるためです。ただし、その代わり、現行犯逮捕ができる要件は厳しく定められています。
また、現行犯逮捕以外の場合でも、警察官だけでなく、検察官や麻薬取締官、労働基準監督官なども逮捕権を持っています。
5、逮捕されたらすぐに弁護士を呼ぼう
警察に逮捕された場合、すぐに弁護士を選任することをおすすめします。弁護士の選任は、警察署で取り調べを受けている最中にも可能です。なぜなら、被疑者には弁護士を選任する権利が刑事訴訟法で認められているからです。
警察の取り調べにおいて、自己に不利益なことについて供述する必要はありません。しかし、一切の供述を拒否することは難しい場合もありますし、勾留される時間が長くなってしまう可能性もあります。そのため、弁護士から供述してもよい内容はどういった事項か、また供述を避けるべき内容はどれかなど、アドバイスを受けたほうが安心です。
罪を認め自白する場合でも、どの程度供述するかなどは、弁護士から助言を受けた上で行うことをおすすめします。
弁護士を選任することは、法的なアドバイスを受けるだけでなく、自分の味方になってくれる存在があるといった心理的な孤独感を和らげる作用もあります。
以上の理由から、弁護士をできるだけ早く選任すべきです。
6、まとめ
警察から呼び出しを受けた場合には、あらかじめ弁護士に相談して対応策を練ることをおすすめします。また弁護士は、警察署への出頭に同行することもできます。ひとりでは出頭したくない場合にも、弁護士への依頼を考えてみましょう。
また逮捕された場合、できるだけ早く弁護士を選任し、法的なアドバイスを受けることで、自己が不利になることを防止することができるでしょう。逮捕された場合や呼び出しを受けてお困りの場合は、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスにご相談ください。浜松オフィスの弁護士が力を尽くします。
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