待ち伏せ行為は、ストーカーとして逮捕される可能性はある?
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静岡県警によると、令和元年のストーカー被害の相談件数は、約400件でうち女性からの相談が90%でした。県警では、ストーカー被害を防ごうと、被害にあった場合の対処法を示したチラシをまくなど、啓もう活動に努めています。
具体的なストーカー行為とは、待ち伏せや、つきまとい行為、電話やメール、SNSでしつこく連絡を取ろうとする、といった行為です。
好意を持った人に対して待ち伏せなどをしてしまった場合には、ストーカー行為と認定される可能性があり、その結果、逮捕されることもあります。
そこで本コラムでは、ストーカー行為として多いといわれている、待ち伏せ行為を中心に、ストーカー行為に関係する法律や、逮捕されたときに取るべき対応について、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士が解説します。
1、「待ち伏せ」はストーカー行為なのか?
本章では、ストーカー行為を規制する法律について解説し、待ち伏せがストーカー行為に当たるかどうかを確認していきましょう。
●ストーカー行為に関連する法律とは?
ストーカー行為は、「ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下、ストーカー規制法)」によって規制されています。
この法律は、ストーカー行為の末に発生した殺人事件をきっかけとして、平成12年に制定されました。
その後、実際に発生した事件を受けて改正が繰り返され、現在の形に至っています。
●「待ち伏せ」はストーカー行為の一種?
ストーカー行為とは、相手の意に反した「つきまとい等」を同一の相手に対して繰り返し行うこと、と定義されています。
そして、同法第2条第1項には、「つきまとい等」のひとつとして、「待ち伏せ」がストーカー行為である明記されています。
その行為がつきまとい等にあたるか判断するときには、行為者が、「自分の行為をストーカー行為と思っているかどうか」は関係ありません。
たとえば、行為者が「相手は自分を待っているのだ」と思っていたとしても、待ち伏せされた相手や警察などが、「待ち伏せ」と判断すれば、その行為はストーカー規制法における「つきまとい等」なのです。
なお、ストーカー行為が成立するうえでは、待ち伏せの相手方が異性であるかは、関係ありません。また、その動機が恋愛感情である必要もありません。
2、待ち伏せ行為が原因で逮捕される可能性はある? 罰則は?
待ち伏せ行為がストーカー行為だと認定された場合、逮捕されるのでしょうか。また、どんな刑罰を受けることになるのでしょうか。
●警告や禁止命令が出される可能性がある
ストーカー規制法第4条および同法第5条では、つきまとい等のストーカー行為をした人に対して、警察や公安委員会がその行為をやめるよう、警告や禁止命令等を出すことができる、と規定しています。
●懲役または罰金が科せられることも
禁止命令等が出される前であっても、待ち伏せ行為等のストーカー行為をした場合、「1年以下の懲役または100万円以下の罰金」(第18条)が科されます。
また、禁止命令等に違反し、ストーカー行為をした場合は、「2年以下の懲役または200万円以下の罰金」(第19条)が科されます。
さらに、その他の禁止命令に違反した場合は、「6か月以下の懲役または50万円以下の罰金」(第20条)が科されます。
初犯であれば、禁止命令を受けるだけで逮捕されるまでは至らないかもしれません。しかし、待ち伏せ行為をした人に以下の行為が認められた場合は、たとえ初犯であろうと逮捕される可能性があります。
- 待ち伏せ行為をしている人が、逃亡する可能性があること。
- 待ち伏せ行為をしている人が、その事実を隠蔽(いんぺい)する可能性があること。
- 待ち伏せ行為をしている人に反省がなく、同じ行為を繰り返す可能性が大きいこと。
- 待ち伏せ行為を受けた人に、著しい精神的苦痛が生じていること。
- 待ち伏せ行為の態様が、著しく悪質であること。
- 住居侵入による待ち伏せなど、他の罪も認められること。
- 待ち伏せに際して、刃物などの凶器を所有していること。
- その他の事情
3、待ち伏せ行為で逮捕されるとどうなるか
以下では、被疑者として逮捕された後の手続きについて解説します。
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(1)送致
警察は、被疑者を取り調べのち、逮捕後48時間以内に、検察へ送致します。
送致後、検察は24時間以内に、引き続き10日間の身柄拘束(勾留)が必要か否かを判断します。このとき、検察官が勾留の必要性を判断するポイントは、逃亡する可能性があるか、証拠隠滅のおそれがあるか否かです。
また、逮捕に至った行為を繰り返さないかもポイントになります。もしストーカー行為に常習性が認められた場合は、勾留される可能性が高くなります。
検察官に勾留が相当と判断され、それを裁判所が認めると、起訴・不起訴が決定されるまで引き続き10日間勾留され、取り調べを受けることになります。
その後の検察官や裁判所の判断次第では、さらに10日間、勾留期間が延長されることもあります。
つまり、逮捕されてから起訴・不起訴が決定されるまで、最長23日間は身柄を拘束されることになるのです。
なお、送致後に検察官が「勾留の必要なし」と判断した場合、あるいは裁判所が検察官の勾留請求を却下した場合は、その時点で被疑者は釈放されます。 -
(2)起訴
先述のとおり、被疑者が逮捕されてから23日間を経過する前に、検察官は起訴するか、あるいは不起訴処分や起訴猶予とするかを判断します。
●不起訴処分や起訴猶予となる場合
捜査の結果や被疑者の状況などに基づき、検察官が被疑者を起訴する必要がないと判断すると不起訴処分となり、釈放されます。
また、不起訴処分ではないものの、検察がさまざまな事情を考慮し「起訴する必要なし」と判断した場合には、起訴猶予処分となり被疑者は釈放されます。
●起訴された場合
一方で、刑事事件として起訴されると被疑者は被告人になります。
起訴されてから第1回目の公判まで、約1か月以上かかることもあります。保釈が認められないかぎりは、公判が開始されるまで、引き続き刑事施設での勾留が続きます。
日本における刑事裁判では、一度起訴されると非常に高い確率で有罪となります。
有罪判決が確定すると同時に、前科がつきます。そして、懲役の実刑判決となった場合は、刑期の満了あるいは仮釈放になるまで、刑事施設の外に出ることができなくなってしまうのです。
4、逮捕や起訴を防ぐために弁護士に相談するべき理由
先述のとおり、いくら悪気がなくても、その待ち伏せ行為について相手がストーカー行為と認識し、警察などがその事実を認定すると、ストーカー行為の加害者として逮捕・起訴される可能性があります。
振り返ってみて、もし自分の行為がストーカー行為かもしれないと思われた場合には、事件として立件される前に、お早めに弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士は、不当な刑罰とならないよう、以下のような弁護活動を行います。
●被害者と示談交渉ができる
釈放や不起訴処分を得るためには、被害者との間で、示談交渉が成立していることが不可欠です。
特にストーカー行為が原因で、被害者に精神的苦痛が生じている場合はなおさらです。
ただし、示談を成立させるためとはいっても、加害者と被害者との間で直接話し合いの場を持つことは難しいでしょう。警察が被害者の連絡先を、加害者に教えるということはありません。
その点、弁護士であれば、警察から被害者の連絡先を得て、早期に被害者と示談交渉を始めることが可能です。
●身柄解放のための活動ができる
処分が決定される前に、弁護士は示談書・嘆願書などをとりまとめ、検察や警察に提出します。そのうえで、警察や検察などの機関に対し、逃亡や証拠隠滅の恐れがないことを伝え、早期に身柄を解放してもらえるよう、交渉することが可能です。
5、まとめ
法律違反であると意識せずに、待ち伏せ等のストーカー行為をしてしまった場合は、刑事処分が科される可能性があることを念頭に、今後の対策を考える必要があります。
そのとき、弁護士があなたの心強いパートナーとなります。
ストーカー事件の弁護活動の、経験と実績のある弁護士であれば、不当に重い罪にとならないように弁護活動を行います。
もし、自分がストーカー行為をしてしまったかもと思われた場合は、できるかぎりお早めにべリーベスト法律事務所 浜松オフィスまでご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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