子どもが逮捕されたらどうサポートすればいい? 少年事件の特徴とは

2020年05月19日
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子どもが逮捕されたらどうサポートすればいい? 少年事件の特徴とは

少年事件はひとたび起こるとメディアでセンセーショナルに報道されることがあるため、「日本では少年事件がまだまだ多く起こっている」と感じる方もおられるでしょう。しかし静岡県浜松市が公表する統計資料を見ると、検挙された少年の数は平成29年には平成25年時点の半数となっています。浜松市内のみならず、全国的に少年事件の件数自体は減少傾向にあるのです。

しかし、残念ながら、まったく少年犯罪がないとはいえません。「お子さんを逮捕した」と警察から電話がかかってきた場合、親として、どのような対応をするべきなのでしょうか。

この後どうなるのか、また何をしたらいいのか、まったく見当がつかないのが当たり前だと思います。本コラムでは、少年事件手続きの基本的な流れをわかりやすく解説し、さらに家族としてどのように本人を支えるべきか浜松オフィスの弁護士がお答えします。

1、ここが違う! 少年事件の特徴

少年事件とは20歳未満の少年や少女が起こす犯罪のことです。

20歳以上の男女が罪を犯した成年事件では、処罰を下すことを目的に刑事訴訟法に基づいて手続きが行われます。しかし、少年事件には、罪を犯した本人を少年法によって保護・教育するという側面があるため、少年法に基づいて事件の対応が行われます。

成人とは事件後の流れや罰則、報道の取り扱いなどが異なるのです。まずはその違いについて知っておきましょう。

  1. (1)少年の保護や教育が目的

    少年事件は少年法に基づいた処分が下されます。少年法の目的のひとつとして、少年本人の保護や教育が掲げられていることから、原則としてすべての事件が家庭裁判所に送られます。本人にとって最適な更生方法は何か、判断されることになります。殺人などの重大事件でもない限り、起訴され、刑事裁判が開かれ、公開される法定で処罰を下されることはありません。

    もちろん、捜査した結果、犯罪の疑いが晴れた場合は、すぐに帰宅可能です。家庭裁判所に送られることはありません。

  2. (2)審判は非公開

    成年による刑事事件において、処分が決定される場は裁判です。しかし、少年事件における処分の決定は、原則、裁判ではなく少年審判で行われます。ここが、成年事件との2つめの違いです。

    少年事件の審判は基本的には非公開で行われます。基本的には、検察官も参加しません。公開の裁判で処罰方法を検討する成人の裁判と違い、また非行をしないように、家庭裁判所が少年に処分を下すのが、少年事件の審判だからです。

    審判では、裁判官と家庭裁判所の調査官らが、少年自身や保護者に対して質問をしたうえで、最終的な処分を決定します。弁護士は、付添人として任命されれば、審判の場に同席することができるため、少年の発言などに対して適切なフォローを行えます。この点も、弁護士にご依頼いただいたほうがよい理由のひとつといえるでしょう。

  3. (3)実名は基本的に公表されない

    少年事件でよく問題となるのが、逮捕された少年自身やご家族の個人情報です。

    成年が逮捕された場合は、報道などで実名が公表されることが多いでしょう。しかし、少年が事件を起こした場合、その名前が発表されることは通常ありません。それは少年法第61条が、家庭裁判所の審判に付された少年の実名を公表することを禁じているためです。

    ただしこれには罰則がありません。そのため、日本新聞協会の準則では、犯人が逃走中で放火や殺人を起こすと予測される場合などについては例外的に公表できるとしています。また、近年ではインターネットの発達により、顔写真をはじめとした個人情報を特定されてしまう危険性があります。つまり、絶対に公表されないとは断言できません。

    もし、インターネット上などで個人情報がさらされてしまったのであれば、早急に弁護士に相談すべきでしょう。

2、逮捕後の流れについて

警察に逮捕されると、その後の手続きはどのように進んでいくのでしょうか。ここでは、少年が実際に逮捕されてから処分が決定されるまでの一般的な流れについて解説します。

  1. (1)逮捕

    事件が発生した場合、警察の捜査が開始されます。現行犯でない場合には、後日逮捕状を持った警察官により身柄を押さえられ逮捕されます。これを「通常逮捕」といいます。
    14歳未満の少年の場合は、刑法の規定により刑事責任を負うことはなく、逮捕されることはありません。しかし、児童相談所によって一時保護される可能性があります。

  2. (2)警察・検察での取り調べ

    警察に身柄を拘束されると、事件の真相を確認するために取り調べを受けます。逮捕後、最長で72時間もの間、身柄の拘束を受けることになります。その間、原則、ご家族であっても面会はできないケースが一般的です。制限を受けず、自由な接見を行えるのは、依頼を受けた、もしくは受ける予定がある弁護士に限られます。

    その結果、犯罪事実が認められれば、検察庁に送致され、引き続き取り調べが行われます。また、少年事件においても、逃亡や証拠隠滅の危険性があると判断されれば、身柄の拘束を行ったまま取り調べをする「勾留(こうりゅう)」が行われることがあります。その場合、原則10日、最長20日もの間、帰宅できません。

    取り調べが終わり、罪を犯した事実が確認されたときは、次に家庭裁判所に送致されます。

  3. (3)家庭裁判所での調査

    家庭裁判所で少年の調査が行われ、その後の処分が決まります。場合によっては、少年鑑別所に収容されることもあるでしょう。少年の調査は、家庭裁判所の調査官が担当します。

    調査を通じて、少年自身が抱える問題を明確にしたうえで、更生のために必要な助言や指導を行う必要があるためです。調査では、少年本人の性格から行動、成育歴や生活環境など、プライバシーにかかわる部分まで確認されます。調査官が、学校や家庭、少年の職場などへ足を運び、調査を行うこともあるでしょう。

  4. (4)少年審判

    家庭裁判所の調査の結果、必要だと判断されると少年審判が行われます。これは成年事件でいうところの刑事裁判に該当しますが、個人情報保護およびプライバシー保護のため非公開で行われます。

    審判では、被疑内容が事実であったかどうかが確認されるとともに、調査結果を踏まえ、処分が決定されます。

  5. (5)処分決定

    審判の結果、不処分、保護観察処分、少年院送致などの処分が決定されます。

    「不処分」は、少年が罪を犯していないと判断される場合などに下される処分です。不処分になると身柄は解放されます。「保護観察処分」は、身柄は解放され自宅での生活を再開しますが、保護司が日常生活の指導を行い犯罪防止に努めます。「少年院送致」は少年院に送られ、施設生活の中で更生することを促します。

    成年事件であれば死刑、懲役または禁錮の処罰が下される可能性が高い、殺人などの重大事件を起こしていた場合、家庭裁判所の調査・審判の結果、検察官のもとに戻され、通常の刑事手続きが行われる場合もあります。これは「検察官送致」と呼ばれる処分になります。

3、将来への影響は?

子どもが警察に逮捕されてしまった際に、特に心配なのは、逮捕が与えるその後の影響ではないでしょうか。ここでは、逮捕された場合の学校や就職への影響について解説します。

  1. (1)学校への影響

    少年が学生の場合、もし知られてしまえば退学になってしまうのではないかと心配される方も多いのではないでしょうか。その場合、できるだけ学校へ知られないような対応を行う必要があります。

    それでも、警察・学校相互連絡制度という制度があるため、状況によっては、逮捕の時点で知られてしまう可能性があります。また、調査の段階で調査官が学校へ連絡を取ることもあり得るでしょう。

    しかし、早い段階から弁護士に相談しておくことによって、弁護士は学校に知られることがないよう、行動します。具体的には、警察や家庭裁判所の調査官に対して、学校への連絡は更生の機会を妨げる可能性があるため避けるよう要請することができるのです。

    それでも、逮捕によって欠席期間が増えてしまうため、受験時に不利になることもゼロとはいえません。また、人の口に戸は立てられないことから、学校内での人間関係に大きな影響を与える可能性があることは否定できないでしょう。

  2. (2)就職への影響

    少年の更生が阻害されないように、少年に関する情報は一般公開されないのが原則です。そのため、就職をする際に、逮捕されたことがあるかを自動的に企業側が知ることができる仕組みはありません。

    ただ、住んでいる地域でうわさや悪評が立てられるといったことは止めようがないものです。また、インターネット上にさらされてしまう可能性もあります。インターネット上に個人情報が掲載されてしまったときは、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。

4、早めに弁護士へ相談したほうがよい3つの理由

弁護士を活用することにより、本人にとっても家族にとっても、よい結果になる可能性が高まります。早めに弁護士に相談したほうがよい理由をここでお伝えします。

  1. (1)早期釈放の可能性が高まる

    逮捕後の対応を少年とご家族だけで行うのは、大変なことです。早期に弁護士に依頼すれば、適切なアドバイスを受けることや、勾留を短くするよう、客観的な事実をもとに捜査機関に働きかけることが可能です。

  2. (2)適切な処分になるよう弁護活動できる

    家庭裁判所に送致されると、調査や審判を経て、処分の内容が決まります。釈放されることもある一方で、少年院などに送られてしまうこともあるため、非常に重要な場面となるでしょう。

    この場面でも弁護士は、更生の妨げとなる不当な結果にならないよう、家庭裁判所に対して弁護活動を行うことができます。

  3. (3)精神的な支えになることができる

    逮捕された少年がこうむる精神的負担は計り知れません。ご両親も逮捕に動揺し慌ててしまうでしょう。このようなとき、問題を家族だけで抱え込むよりは、少年事件に対応した経験が豊富な弁護士に依頼することをおすすめします。

    更生を視野に入れた適切な処分が下されるような弁護活動を行うだけでなく、少年本人やご両親の精神的な負担を軽くすることも、弁護士の大事な仕事のひとつなのです。

5、まとめ

逮捕された子どもの多くは、非常に多感な時期にあります。そのため、一日も早く釈放を実現し、本人の心のケアをしたうえで更生を促すことが1番です。早期の釈放と適切な処分を求めていくことは、更生を促すためにも重要です。

もしも子どもが逮捕されてしまったら、ベリーベスト法律事務所までご相談ください。浜松オフィスの弁護士が、早期釈放と適切な処分を目指し、サポートを行います。ご家族だけで抱え込まず、まずはご連絡ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています