未成年者が逮捕されたあとの流れは? 家族にできることを弁護士が解説

2020年04月30日
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未成年者が逮捕されたあとの流れは? 家族にできることを弁護士が解説

浜松の少年事件の検挙件数は、ここ数年下がり続けています。しかし、その一方で14歳以下の触法少年は増えており、殺人などの罪を犯す凶悪犯はいないものの、20歳未満の少年が起こす事件は一定の割合で起き続けていることがわかります。つまり、少年が罪を犯してある日突然逮捕されるという事態は、それほど珍しいことではないといえるでしょう。

しかし、ある日突然警察から「家族を逮捕した」と連絡を受けたとしたら、どのような方でもひどく驚くでしょう。確かに、未成年者であっても罪を犯せば逮捕されることはありますが、連絡を受けた家族は殊更大きな不安を感じるものです。

そこでこの記事では、未成年の子どもが逮捕されたあとの流れや、少年審判と呼ばれる手続きについて、浜松オフィスの弁護士が解説します。また、ご家族ができることについても、ぜひ確認してみてください。

1、未成年者が逮捕されたらどうなる?

まず、未成年者が逮捕された場合の流れについてお伝えします。なお、以下でいう「少年」とは女子も含まれるものとします。

  1. (1)警察や検察の捜査

    逮捕後は48時間以内の警察による取り調べを受けます。警察からの捜査が終わり、必要があると認められると検察へ身柄が移されます。検察は取り調べを続け、少年の身柄拘束をこれ以上続けるか否かを24時間以内に判断します。

    ここまでの流れは成人と同様で、この72時間の間は面会が許されるのは弁護人のみになります。家族であっても面会はできません。

    つまり、逮捕されてから72時間で、さらに長期の身柄の拘束を続けるかどうかを判断されてしまうことになるわけです。しかも前述のとおり、親しい大人が直接話をしたりサポートしてあげたりすることができません。したがって、できるだけ早い段階で弁護人に相談し、早期釈放を目指すためにも、準備を始める必要があります。

  2. (2)勾留

    勾留とは、送致後も身柄の拘束を行ったまま取り調べを行う措置を指します。検察官が引き続き身柄の拘束が必要だと判断した場合は、裁判所に対して勾留請求を行います。これが認められると原則10日間勾留され、さらに捜査が必要と判断した場合には10日間延長され、最大で20日間勾留されることもあります。

    勾留が長引くと本人の精神的な負担も大きく、職場や学校に知られるおそれも高くなります。家族としてはできる限り回避したいと考えるでしょう。

    なお、ここまでの流れも成人が逮捕された場合とほぼ同じですが、少年事件の場合は、検察官が勾留に代わる観護措置を求めることが認められています。身体拘束は10日間で延長は認められず、収容場所は少年鑑別所になります。

  3. (3)家庭裁判所への送致

    捜査が終わると、すべての少年事件は家庭裁判所に送致されます。成人の刑事事件の場合は検察の裁量で不起訴処分を決定することもありますが、少年事件では検察の裁量は認められていません。この点は成人事件との大きな違いです。

2、少年審判はどのように進む?

成人した大人が事件を起こすと、真実を明らかにするとともに処罰を下すことを目的に刑事裁判が行われます。しかし、14歳以上の未成年者が事件を起こした場合は、重大事件ではないかぎり、少年審判を通じて処分が下されることになります。少年審判の目的は、処罰を下すことではなく、少年自身の更生です。

そのため、検察での取り調べが終わったあとは、成人が刑事事件を起こしたときと異なる展開となります。

  1. (1)全件送致主義

    まず、検察官は捜査が終わったすべての事件を家庭裁判所に送ります。ここでは検察官は成人と異なり、少年を不起訴処分にする判断はできません。

  2. (2)家庭裁判所での調査

    家庭裁判所では、裁判官が記録を検討し、観護措置をとるべきかどうか判断します。観護措置とは、少年鑑別所に原則2週間、最大8週間収容して少年の心身の状態について調査する処分のことです。観護措置がとられない場合は釈放となりますが、その後、在宅での調査が行われることもあります。

    そして、家庭裁判所の調査の結果、非行事実の存在が確認されなかった場合や、非行事実があるものの、その原因となった問題点が改善されて再非行のおそれがなくなり、少年審判を行う必要がないと判断された場合は、審判不開始となります。

    この場合、少年の身柄は解放され、通常の生活に戻れることになります。

  3. (3)少年審判

    少年を審判に付す必要があると判断された場合には、成人の裁判に該当する少年審判が行われることになります。

    しかし、成人の場合と異なり、少年審判は非公開で、原則として検察官は関与しません。そして、基本的には1回目の審判で最終的な処分が言い渡されます。なお、少年審判を行った上で、「試験観察」として一定期間様子を見てから最終処分を決定することもあります。

3、少年審判で言い渡される処分

少年審判において言い渡される処分には、以下のようなものがあります。

  1. (1)不処分

    非行事実が極めて軽微な場合や保護処分などの必要がないと判断された場合は、不処分となります。成人の刑事事件でいう無罪のようなもので、観護措置をとられていた場合にはその場ですぐに身柄が解放され、通常の生活に戻ることができます。

  2. (2)保護処分

    保護処分には、保護観察・児童自立支援施設等送致・少年院送致があります。

    ●保護観察
    家庭での生活を送りつつ、保護観察官や保護司が生活指導を行うことで少年の更生を図る処分です。

    ●児童自立支援施設等送致
    児童を入所させるか保護者の元から通わせて自立を支援していくもので、少年自身よりもその環境に問題があると判断された場合の処分です。

    ●少年院送致
    少年を施設に収容し、規律に親しませて生活訓練を行い、矯正教育を与える処分です。少年の自由を拘束するという部分で、保護処分の中ではもっとも重い処遇といえます。

  3. (3)検察官送致

    検察官送致は逆送ともいい、死刑、懲役または禁錮に当たる重大な罪を犯した場合や、手続き期間中に20歳以上の年齢に達した場合にとられる処分です。検察官送致の場合、成人と同様の刑事手続きが行われ、起訴されて有罪になると法定刑の範囲内で刑罰を受けることになります。

4、家族にできること

  1. (1)生活環境の改善

    事件を起こしてしまった背景には生活環境などの問題があることが多いため、まずはその改善に努めなければなりません。また、家族が少年の監督を行える状況であれば、結果的に更生施設に長く収容する必要はないと判断され、早期の釈放につながる可能性もあります。
    家族で少年を支えることはとても重要なのです。
    多感な時期でもあり、逮捕されたことがその後の人生にも大きく影響することも考えられますので、できる限り迅速に環境を整えてあげてください。

  2. (2)弁護士に相談する

    逮捕後の流れや処分の中で、家族として「これだけは回避してあげたい」と感じるポイントがあったかと思います。
    弁護士であれば、客観的な証拠を収集して意見書などを作成し、裁判官らと面談して積極的に少年の更生の可能性を主張することで、観護措置の回避や保護観察処分を獲得できるケースがあります。

    また、成人事件同様に、暴行事件や窃盗事件など特定の被害者がいる事件の場合は、示談交渉も重要となります。被害者との和解は、早期釈放への大きな要因となるからです。

    さらに、少年の速やかな社会復帰のためにも、捜査機関や裁判所に対して、事件についての連絡を学校や勤務先に対して行わないように働きかけることもできます。

    これらのことを家族だけで対処するのは困難ですし、思うような結果にならない可能性もあります。できる限り早い段階で弁護士に相談することをおすすめします。

5、まとめ

今回は、未成年者の逮捕とその後の流れを中心に解説しました。たとえ未成年者でも、14歳以上であれば逮捕されることがあります。そして未成年者の場合成人とは異なり、警察による取り調べや長時間の拘束などが精神状態に与える影響は計り知れません。

非常に多感な時期でもあるので、将来への影響も考慮し、家族としてできることを全力でサポートしてあげてください。しかし、刑事事件はスピードが勝負の側面も強いので、なるべく早い段階で弁護士に相談するほうがよいでしょう。

未成年の子どもが逮捕されてどうしたらよいかわからないとお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスまでご連絡ください。お子さまの将来を見据え、サポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています