子どもがオレオレ詐欺で逮捕! 弁護士に依頼したほうがいい理由は?
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浜松市では、昨今急増するオレオレ詐欺をはじめとした特殊詐欺被害を防止するため、民間の企業と提携・連携した被害防止啓発を実施しています。オレオレ詐欺などは、発生件数が多いことは知っているものの、高齢者がいない世帯であれば無関心であることも少なくないでしょう。
しかし、この問題は、被害者になり得る高齢者だけの問題ではなく、加害者として犯罪の一部に関与してしまう可能性のある若者にとっても重大な問題です。わが子には関係がないと思っている方が多いかもしれませんが、最近は「高い報酬が得られるよ」などと誘われ、未成年者がバイト感覚で、「オレオレ詐欺」に関与してしまった事件もあります。しかも、こうした特殊詐欺は厳罰化傾向にあり、たとえ未成年者であっても重い処分を受けるおそれがあるのです。
今回は、若者がオレオレ詐欺で逮捕された場合、処分はどうなるのか、逮捕から裁判又は審判までの流れ、弁護士に依頼するメリットなどを浜松オフィスの弁護士が解説します。
1、オレオレ詐欺で未成年者が関わりがちな犯行とは
いわゆるオレオレ詐欺とは、子どもや孫などの身内、会社員、警察官などいろいろな立場になりすましたニセ者(犯人)が、電話を悪用して行う詐欺のことです。振り込め詐欺や特殊詐欺などともいいます。
オレオレ詐欺には、次のように役割分担があります。
- 主犯格……詐欺の方法を立案するなど、グループを指揮する人
- かけ子……身内などを装って被害者宅に電話をかけてだます人
- 受け子……被害者から直接お金を受け取る人
- 出し子……銀行に行き、振り込みを確認してお金を下ろす人
警視庁がまとめたデータによれば、令和元年にオレオレ詐欺で逮捕された未成年者のうち、約74.9%が受け子でした。未成年者については、その他、グループに誘い込むリクルーターや出し子など、組織の中で末端の役割を担ったことで逮捕されるケースがほとんどだといわれています。
なお、静岡県警察では、オレオレ詐欺を「振り込み型オレオレ詐欺」と「現金受け取り型オレオレ詐欺」の2種類に分類しています。
2、受け子や出し子はどのような罰則・量刑なのか?
では、子どもが受け子や出し子などを担って逮捕された場合、どのような罪に問われるのでしょうか。
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(1)成人した子どもがオレオレ詐欺に加担した場合
受け子の場合は詐欺罪が適用される可能性が高いです。詐欺罪は刑法246条で「人を欺いて財物を交付させた者は、10年以下の懲役に処する」と定められています。罰金刑が定められていないだけでなく、昨今はオレオレ詐欺について裁判所が厳しく判断する傾向にあります。成人している子どもが事件に加担した場合は、初犯であっても執行猶予がつかない判決が言い渡される事例が少なくありません。
他方、出し子については、「このキャッシュカードでお金を引き出してきてくれるだけで10万円あげるよ」と唆されるなどして、詐欺行為自体については何も関与していない場合もありますが、その場合でも、他人名義のカードを使って、正当な理由なく銀行の占有下にあるお金を引き出している行為であるため、窃盗罪が適用される可能性があります。
窃盗罪は、刑法第235条で「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役または50万円以下の罰金に処する」と定められています。場合によっては、執行猶予が付いたり、罰金刑となったりする場合がありますが、前科にはなってしまいますので、やはり重大なことです。
受け子と出し子、いずれにしても、詐欺行為に関してどのくらい認識・関与していたのか、初犯か再犯か、被害者との示談が成立しているかなどによって、量刑が異なってきます。 -
(2)未成年の子どもがオレオレ詐欺に加担した場合
日本では原則として、未成年の子どもに対しては刑事罰を問わないことになっています。したがって、刑法等の法律に従って刑事罰を科されるのではなく、少年法の規定に従って保護処分が決定されます。
なお、殺人罪等の重罪の場合は、成人と同様の手続きで刑事罰を科されることもあります。しかし、一般的に、オレオレ詐欺の受け子など詐欺罪や窃盗などで逮捕された場合は、成人のような、懲役刑や罰金刑に処されることはほとんどありません。
3、未成年者が逮捕されたときの流れ
次に、未成年者が逮捕された場合の流れを確認しておきましょう。
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(1)逮捕・勾留
オレオレ詐欺に加担した場合、たとえ未成年者であっても成人と同じように逮捕されるおそれがあります。逮捕の要件は、「逃亡や証拠隠滅のおそれがあること」、「罪を犯したことが明らかである場合」です。逮捕されない場合は、在宅事件として捜査が進められますが、オレオレ詐欺に代表される特殊詐欺は、組織的に行われることが多く、逮捕しなければ証拠隠滅のおそれがあるため、逮捕される可能性が濃厚です。逮捕後、警察は48時間以内に検察へ送致するか、釈放するかを決定します。
検察に送致された場合、検察官は24時間以内に裁判所に勾留請求をするかどうかの決定をします。勾留請求が認められた場合は10日間、そこから勾留の延長が認められた場合はさらに最大10日間、合計で最大20日間勾留される可能性があります。検察官が勾留請求をしなかった場合または勾留請求はされたものの裁判所が勾留を認めなかった場合は、釈放されますが、釈放されても事件の捜査は続きます。なお、未成年者の場合は、勾留ではなく観護措置が取られ、少年鑑別所への収容が選択される事例も少なくありません。
未成年者が起こした事件では、成人事件よりも慎重に勾留を検討しなければならないとされています。 -
(2)家庭裁判所へ送致・審判
未成年者が起こした事件に関しては、捜査終了後、すべての事件が家庭裁判所に送られます。これを全件送致主義といいます。そして、家庭裁判所で少年審判の開始が決定されれば、審判によって次のような処分が決定されるのです。
- 不処分
- 保護観察処分
- 児童自立支援施設や児童養護施設、少年院などの更生施設への送致
- 都道府県知事・児童相談所長への送致
- 検察官への送致
少年事件では、成人事件とは異なり、事件の悪質性だけではなく、更生の可能性を重視して処分が決定されます。たとえば、比較的軽度の犯罪であっても反省している様子がなく、再犯の可能性が高い環境に身を置くことになると判断されれば、身柄の拘束を伴う少年院への送致が選択されることもあるのです。
未成年の子どもにとって、身柄の拘束を伴う処分は、学校や職場への影響が甚大ですので、できるだけ避けたいものです。
4、未成年者が逮捕されたらすぐに弁護士に依頼を
逮捕された場合、たとえ未成年者であっても、逮捕直後は家族との面会ができないことがほとんどです。特にオレオレ詐欺の場合は組織ぐるみの犯行と考えられます。したがって、たとえ逮捕された本人が組織の一員などではなかったとしても、共犯者による証拠隠滅などのおそれがあるため、面会が制限されると考えておいた方がよいでしょう。
しかし、依頼を受けた弁護士であれば、いつでも自由に本人と面会ができ、事実の確認や取り調べについてのアドバイスを行えます。逮捕されて心細い状態に置かれている本人を励ますことができますし、ご家族からのメッセージを伝えたり、預かった差し入れを渡したりすることもできます。
未成年者の場合、オレオレ詐欺に加担したことについて故意がなかったとしても、警察官の誘導により故意を認めてしまうことがあります。弁護士から適切なアドバイスを受けることで不利益を回避することができるでしょう。
また、弁護士であれば、検察官への働きかけや裁判所への準抗告の手続き等を通して早期釈放の実現に向けた活動をするとともに、被害者との示談交渉を早急に進めたり、学校や職場に対しても厳しい処分をしないよう求めたりすることもできます。
また、少年審判が行われる際も、弁護士は付添人として参加ができます。少年が深く反省しているといった善情状を主張することや、再犯防止のための環境を整えることで、少年院送致などの厳しい処分を回避し、不処分や保護観察処分などにとどめてもらえるように活動し、少年自身の将来を考慮したサポートを行います。
未成年者が起こした事件については、単に罰を与えるのではなく、再犯を防止し、真に更生させることが重要視されます。弁護士のサポートによって一刻でも早く通常の生活に戻り、更生の道筋をつけることができるでしょう。
5、弁護士は誰が、いつ選任できるのか
次に弁護士の選任について確認しておきましょう。
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(1)成人事件の弁護人について
オレオレ詐欺などの成人の刑事事件において、弁護活動をする弁護士を弁護人と呼びます。弁護人には、国選弁護人と私選弁護人があります。
弁護人は私選弁護人が原則ですが、経済的な事情などにより私選弁護人が選任できない場合は、国が国選弁護人を選任します。国選弁護人を選任できるのは、勾留が決定してからと定められています。弁護士費用は原則国の負担となりますが、被疑者段階では、勾留決定された被疑者しか利用できないなどのデメリットがあります。
とはいえ、早い段階から速やかに弁護活動に着手してもらうことで、日常へ及ぼす影響を最小限に抑えたいと考えることは、親であればごく当然のお気持ちです。逮捕前、もしくは逮捕直後の弁護活動などを希望するのであれば、国選弁護人ではなく私選弁護人を選択しなければなりません。
私選弁護人であれば、出頭に同行するなど逮捕前からサポートができますし、逮捕直後から長期にわたる身柄拘束を回避するための弁護活動が行えます。 -
(2)少年事件の付添人について
少年事件では、成年事件における国選弁護人制度のように広く使える補助制度が存在しません。国選付添人制度という制度があるものの、対象となる事件が限定されてしまっているため、利用されづらいという現状があります。
未成年者は法律知識に乏しく、逮捕されたことで精神的にもかなり不安定な状態となるので、一刻も早く弁護士が接見してサポートしたほうがよいでしょう。私選付添人であれば、いつでも本人や家族が自由に選任でき、早期釈放・処分軽減に向けてスピーディーに対応することができます。
警察や裁判所への対応だけでなく、学校や職場、家庭環境の整備を行い、再犯を防止するためのサポートを行うことも可能です。
6、まとめ
今回は、子どもがオレオレ詐欺で逮捕された場合における手続きの流れ、弁護士に依頼するメリットなどをご紹介しました。少年事件の場合は、逮捕されたらすぐに弁護士に依頼することをおすすめします。少年事件の経験豊富な弁護士が対応することで、早期釈放や処分軽減が可能となり、通常の生活に戻ったうえで更生へのスタートを切ることができます。
子どもがオレオレ詐欺などで逮捕されてしまいお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所・浜松オフィスまでご連絡ください。少年事件の知見が豊富な浜松オフィスの弁護士が、スピーディーに対応し更生をサポートします。
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