妊娠中に夫の浮気が発覚! 離婚する? 慰謝料請求をしたいときは
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静岡県浜松市における2020年の婚姻件数は3193件、離婚件数は1113件でした。
なかには、子どもを授かったにもかかわらず、不倫が原因で離婚に至った夫婦もいらっしゃるでしょう。妻の妊娠中に夫(旦那)が他の女性と浮気(不倫)をすることは、きわめて卑劣な行為です。
婚姻中に配偶者以外の者と性交渉を行うことは「不貞行為」に該当し、離婚原因や慰謝料請求の原因となります。浮気をされてしまった側としては、浮気の証拠を十分に集めたうえで、離婚や慰謝料請求をご検討ください。
この記事では、妊娠中に夫の浮気が発覚した場合に、離婚請求や慰謝料請求について妻が知っておくべきことを、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士が解説します。
出典:「令和4年度版保健衛生年報」(浜松市)
1、妻の妊娠中、夫はなぜ浮気をする?
妻の妊娠中に夫が浮気をする原因は、複数考えられますが、その一つに妊娠によって妻の関心が夫から遠ざかってしまうことが考えられます。
たとえば以下のような事情が、妊娠中の浮気の背景にあるケースが多いようです。
- 妊娠が判明して以降、セックスレスになった
- 身体の変化やつわりなどによって、妻が情緒不安定になった
- 妻の関心が子どもに向くようになり、夫が寂しさを感じた
しかし妻の立場からすれば、こうした事情はやむを得ないものであり、決して浮気を正当化できるものではありません。
どのような理由であっても、妊娠中に浮気をした夫に対しては、離婚請求や慰謝料請求を含めた厳しい対応を検討することでしょう。
2、妊娠中に浮気された場合、妻が取り得る選択肢
妊娠中に浮気された妻の対応としては、大きく分けて以下の3通りが考えられます。
感情的になる気持ちを抑えて、ご自身と子どものためにどの選択肢を取るべきか、熟慮のうえでご判断ください。
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(1)離婚+慰謝料を請求する
もっとも厳しい対応は、離婚と慰謝料を併せて請求することです。
配偶者がいるにもかかわらず、他の異性と性交渉を行うことは、法定離婚事由の一つである「不貞行為」に該当します(民法第770条第1項第1号)。また、不貞行為は夫婦の貞操義務に違反する「不法行為」(民法第709条)であり、慰謝料を含めた損害賠償の対象です。
なお慰謝料については、配偶者に加えて浮気相手(不倫相手)にも請求できます(共同不法行為。民法第719条第1項)。 -
(2)離婚せずに慰謝料のみを請求する
子どもが生まれてくることを考えると、夫と離婚せずに関係再構築を目指した方がよいという判断になることもあり得るでしょう。その場合は、離婚せずに慰謝料だけを請求することが考えられます。
法的には、夫と浮気相手の双方に慰謝料を請求できます。しかし、夫と離婚しない場合には、浮気相手だけに慰謝料を請求する方が一般的です。 -
(3)請求を行わずに関係再構築を優先する
浮気に関して慰謝料請求を行うと、夫との関係再構築に支障が生じてしまうと思われる場合もあるかもしれません。その場合には、あえて慰謝料請求を行わずに、夫との関係再構築を優先するという選択肢もあります。
仮に関係再構築が失敗した場合には、その段階で改めて慰謝料請求を行うことも可能です。
ただし慰謝料請求権は、以下のいずれかの期間が経過すると時効消滅する点にご注意ください(民法第724条)。- ① 妻が浮気の事実および浮気相手を知ったときから3年間
- ② 浮気の時点から20年間
3、妊娠中の浮気に関する慰謝料請求のチェックポイント
妊娠中に夫が浮気をしたことについて、夫や浮気相手に慰謝料を請求する際には、以下の各点にご留意のうえでご対応ください。
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(1)妊娠中の浮気は慰謝料が高額になりやすい
夫の浮気が妻の妊娠中に行われた場合、請求できる慰謝料は高額となる傾向にあります。
妻が妊娠によって肉体的に大きな負担を感じており、かつ近い将来子どもが生まれるという状況における浮気は、夫婦の信頼関係に対する重大な裏切り行為です。
そのため、浮気によって妻が被る精神的損害は、妊娠していない状況での浮気よりも大きいと言えます。妊娠中の夫による浮気については、ある程度高めの金額を提示したうえで慰謝料を請求してみることも有力な方針です。 -
(2)離婚するかどうかで慰謝料の金額が変わる
浮気に関する慰謝料は、その後夫婦が離婚するかどうかによって金額相場が変わります。
夫婦が離婚する場合、婚姻関係を破壊されたことに伴う精神的損害は重大であるため、浮気の慰謝料は高額となる傾向にあります。離婚する場合の慰謝料額は、200万円程度となることが多いです。
これに対して、夫婦が離婚しない場合には、離婚する場合よりも慰謝料は低額となる傾向にあります。離婚しない場合の慰謝料額は、100万円程度が標準的です。
なお夫と離婚せず、浮気相手だけに慰謝料を請求する場合には、求償権放棄によって、慰謝料が半額程度に減額されることが多い点にご注意ください。 -
(3)慰謝料請求には浮気の証拠が重要
夫の浮気について慰謝料を請求するためには、夫が浮気相手と性交渉を行ったこと(=不貞行為)の証拠を確保することが重要です。
十分な証拠があるかどうかが、慰謝料請求の交渉や訴訟を有利に進められるかを大きく左右します。
不貞行為の証拠例は、以下のとおりです。- 自宅やラブホテルなどに出入りする現場の写真、動画
- 性交渉の現場を撮影した写真、動画
- メッセージのやり取り(メール、LINE、メッセンジャーなど)
- 通話録音
これらの証拠をできる限り豊富に集めて、夫や浮気相手が言い逃れできないようにしましょう。
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(4)慰謝料請求に当たってすべきこと・すべきでないこと
慰謝料請求を行うに当たっては、交渉や訴訟を有利に進めるため、不貞行為の証拠を確保することが先決です。
また、お腹の中の子どもに関することを含めて、夫婦の将来につき夫とよく話し合うことも重要になります。
その一方で、夫や浮気相手に対して感情をぶつけることは、事態の改善に繋がらないため避けるべきです。
たとえば、以下の行動はトラブルを複雑化させるだけでなく、ご自身の立場を悪化させる可能性もあるのでお控えください。- 確実な証拠がないのに夫を問い詰める
- 浮気相手のところに押しかける
- 夫や浮気相手の職場に浮気の事実を言いふらす
4、夫に離婚を請求する際の注意点
夫との離婚を決意した場合、離婚に向けて夫と協議を始めることになります。その際、妻としては以下の点に注意して、できる限りスムーズに、有利な条件で離婚を成立させることを目指しましょう。
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(1)決めておくべき離婚条件がたくさんある
夫と離婚する際には、さまざまな離婚条件を取り決めておく必要があります。
離婚時に決めておくべき主な離婚条件は、以下のとおりです。① 財産分与・年金分割
夫婦の共有財産をどのように分けるかを決めます(財産分与)。
また、婚姻期間中にいずれかが厚生年金保険へ加入していた場合、加入記録の分割方法も決めておきます(年金分割)
② 慰謝料
浮気によって妻が被った精神的損害の賠償額を決めます。
③ 婚姻費用
離婚前に別居する場合、収入の多い側が少ない側に対して支払う婚姻費用の金額などを決めます。
④ 親権
離婚時点で出生済みの子どもにつき、父母のどちらが親権を持つかを決めます。
妊娠中の子どもについても、離婚前に出産する場合には親権者を決める必要があります。
なお、離婚後に子どもが生まれた場合、親権者は原則母親となります。
⑤ 養育費
非同居親が同居親に対して支払う養育費(子どもの生活費・学費などに充てる)の金額などを決めます。
⑥ 面会交流
非同居親が子どもと交流する頻度・方法などを決めます。
離婚後のトラブルを防止するため、すべての条件について漏れなく取り決めておきましょう。
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(2)出産費用の支払いにめどを付けておくべき
生まれてくる子どもの出産費用については、父母が分担して支出すべきものです。
出産時には健康保険から出産育児一時金が支給されますが、出産費用を賄いきれない場合もあります。その場合には、夫に対しても相応の負担を求めましょう。 -
(3)妊娠中のストレスを軽減するため、弁護士にご相談を
妊娠中は、精神的なストレスが身体の変化に表れやすい時期であるため、心に大きな負担をかけてしまうことは避けるべきです。
夫との離婚協議・離婚調停・離婚訴訟などは、当事者に大きな精神的負担を強いる傾向にあります。弁護士に依頼することで、必要な手続きや対応を一任することができ、負担は大きく軽減されます。
妊娠中のストレスを軽減するためにも、離婚について、お早めに弁護士までご相談ください。
5、まとめ
妊娠中に夫の浮気が判明した場合、離婚や慰謝料請求を検討しましょう。その際、妊娠中に過度なストレスがかかることは望ましくないため、弁護士に依頼のうえで対応することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスでは、浮気・不倫に関する離婚請求・慰謝料請求のご相談を随時受け付けております。夫の浮気・不倫に法的な措置をご検討の方は、ぜひ当事務所にご相談ください。
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