離婚協議書は公正証書で作るのがおすすめ メリットと作成ポイント
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平成29年(2017年)の静岡県人口動態統計によると、同年中の静岡県内の離婚件数は5983件でした。
夫婦が離婚をする際には、離婚に関する条件を明確にするため、離婚協議書を作成することが推奨されています。
この離婚協議書については、法的に形式が決まっているわけではありません。
しかし、合意の内容をしっかりとした形で残しておきたい場合には、公正証書の方式で離婚協議書を作成することをおすすめします。養育費の不払いなどの場合で強制執行を行いやすくなるなどのメリットがあるからです。
この記事では、離婚協議書を公正証書の方式で作成することのメリットや、作成のポイントなどについて、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚協議書・公正証書とは?
離婚協議書・公正証書といっても、どういったものなのかイメージがわかないという方もいらっしゃるかもしれません。
まずは、離婚協議書・公正証書に関する基本的な事項を押さえておきましょう。
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(1)離婚協議書は離婚の条件などを定める文書
離婚協議書は、離婚の条件などについて定め、夫婦間で締結する合意文書です。
離婚自体は役所に届出を行えば成立しますが、後からもめ事に発展しないように、離婚時に財産分与・養育費・婚姻費用などについても夫婦間で合意しておくのが通常です。離婚協議書は、こうした離婚の条件面をまとめておく文書という位置づけになります。 -
(2)公正証書は公証人が作成する公的な文書
公正証書は、公証人という公務員が作成する公的な文書です。
通常、私人間で作成する契約書などの文書では、特に作成形式を定められていません。
これに対して公正証書は、公証人法その他の関連法令に従った手順・方式によって作成されるフォーマルな文書です。
2、公正証書を作成するメリット
公正証書は、公文書であるという性格上、通常の契約書などにはない法的な効果が認められるなどのメリットがあります。
公正証書を作成することの具体的なメリットについて見ていきましょう。
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(1)財産分与・養育費・婚姻費用などについての強制執行がスムーズ
契約によって合意したにもかかわらず、相手がその内容を履行しない場合には、強制執行をすることが可能です。強制執行をするには、通常訴訟を提起して勝訴判決を得る・裁判上の和解をする・調停を成立させるなど、かなり時間のかかる手続きを経る必要があります。
このような強制執行を行う際に必要となる請求権の存在や範囲を公に証明する文書を「債務名義」と言います。裁判外で協議離婚をした場合、調停調書や判決書などの債務名義の取得がされません。裁判外の協議離婚の場合には、公正証書により債務名義を取得することができます。
強制執行の対象が金銭債務であり、公正証書で「債務者が直ちに強制執行に服する」旨の陳述(強制執行認諾文言)が記載されている場合には、公正証書の正本を用いて、直ちに強制執行の手続きを取ることができます(民事執行法第22条第5号)。
離婚に関しては、財産分与・養育費・婚姻費用などの金銭債務の強制執行をスムーズに行えることは、公正証書の方式で作成することの大きなメリットといえるでしょう。 -
(2)法的に有効な文書が確実に作成できる
公正証書は法律・公文書作成の専門家である、公証人の関与の下で作成される文書です。
公正証書を作成する際には、法的に有効な文書となっているかどうかについて、専門的な見地から入念なチェックが行われます。
そのため、後から公正証書自体の有効性が問題となることはまずありません。
このように、法的に有効な文書が確実に作成できる点も、公正証書のメリットのひとつといえます。
3、公正証書の作り方と知っておきたいポイント
公正証書を作成する手続きは独特な側面があるため、不慣れな場合は作り方の流れや作成時の注意点などを事前に押さえておく方が安心です。
以下では、公正証書の作り方や、作成の際に押さえておきたいポイントについて解説します。
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(1)公証役場への作成の申し込みが必要
公正証書は公証人が作成することになりますので、作成の際には公証人に対してアポイントを取る必要があります。
公証人は、「公証役場」という役所にいるため、まずは公証役場に連絡を取ってみましょう。
公証人から初回面談の日時について連絡を受けたら、その日までに離婚協議書その他の必要書類を準備します。
初回面談で必要書類の提出や事実関係の確認などを終えたら、公証人側で公正証書の作成が進められます。
作成には1週間から3週間程度を要することが多いようです。
そして後日、改めて公証役場に出向いて、公正証書の原本に署名・押印をすれば、公正証書は完成となります。 -
(2)事前に離婚協議書の内容を固めておくことが必要
公証役場では、公正証書を作成するために必要な情報の整理が行われることはありますが、離婚に関する条件面を変更したりすることは基本的に想定されません。
したがって、公証役場に行く時点で、公正証書としての離婚協議書に盛り込む内容を確定させておく必要があります。
一般的には、通常の契約書の体裁で離婚協議書を作成しておき、「この内容で公正証書を作成してください」と公証人に提示できるように準備しておくことになります。 -
(3)離婚協議書の公正証書に記載すべき内容は?
離婚協議書の公正証書には、離婚をする際に決めておくべきことについて、基本的にすべて盛り込んでおく必要があります。
たとえば以下のような内容を記載することになります。<離婚協議書(公正証書)の内容>- 財産分与の内容、金額、支払い方法
- 養育費の金額、支払い方法
- 婚姻費用の金額、支払い方法
- 親権者の指定
- 面会交流の頻度、時間、方法
- 年金分割の内容
- 慰謝料(もしあれば)
なお前述のとおり、金銭債務に関する合意については、公正証書において債務者が直ちに強制執行に服する旨の陳述(強制執行認諾文言)が記載されていることを条件として、公正証書を使って、直ちに強制執行の手続きを取ることが可能です。
そのため、離婚協議書の公正証書には、強制執行認諾文言を記載することを忘れないようにしましょう。 -
(4)離婚後であっても、離婚協議書の公正証書化は可能
離婚をする際には通常の契約書などと同じ方式で離婚協議書を作成していたものの、後からやっぱり公正証書を作成したいということになった場合も、離婚協議書を公正証書化することは可能です。
この場合も、公証役場に連絡を取り、離婚時に公正証書を作成する場合と同じ手続きを経て、公正証書を作成します。
ただし、もともと作成していた離婚協議書の中で記載上の不備などがある場合には、不備を修正するなどの調整が入る可能性があるので注意が必要です。
4、離婚協議書の作成は弁護士に相談を
夫婦が離婚を決め離婚協議書を作成する場合には、以下の理由により弁護士に相談することをおすすめします。
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(1)合意しておくべき事項に漏れがなくなる
離婚協議書には、離婚をする夫婦が別れた後に、お金や子どものことなどで揉めることがないようする、という目的があります。
そのためには、離婚時に合意しておくべき事項を、網羅的に離婚協議書に盛り込んでおく必要があります。
ベリーベスト法律事務所の弁護士は、離婚をする夫婦の事情を十分に聞き取ったうえで、紛争になりそうなポイントを正確に把握するよう努めています。
そのうえで、決めておくべき事項を丁寧に洗い出しますので、漏れのない紛争防止に役立つ離婚協議書を作成することが可能です。 -
(2)曖昧な文言を残さずに明確な離婚協議書を作成できる
紛争防止という観点からは、離婚協議書の文言には曖昧なところを残さず、誰が読んでも意味がすんなりわかるように作成することが重要です。
ベリーベスト法律事務所の弁護士は、法律の内容を踏まえたうえで、わかりやすく、かつ二重の意味に取られることのない明確な文言を用いて、離婚協議書を作成いたします。 -
(3)公正証書の作成手続きもスムーズに行える
離婚協議書を公正証書の方式で作成する場合、公証役場での手続きが必要となるため、不慣れな方にとっては身構えてしまう部分もあるかもしれません。
ベリーベスト法律事務所の弁護士は、公正証書の作成について豊富な経験を有しているため、公証役場での手続きもスムーズに進めることができます。
5、まとめ
離婚協議書を作成する場合には、手続きはやや複雑になるものの、公正証書の方式で作成することをおすすめします。
公正証書の方式で離婚協議書を作成した場合、財産分与・養育費・婚姻費用などが支払われない場合に、強制執行の手続きへとスムーズに移行することが可能です。
また、法律の専門家である公証人が作成する公文書であるため、文書の法的有効性が確実に担保されるメリットもあります。
公正証書を作成する場合には、合意しておくべき事項に漏れがないように、弁護士に依頼するのが得策です。
ベリーベスト法律事務所では、離婚に関する経験を豊富に有する弁護士が、依頼者の親身になってサポートいたします。
離婚問題でお悩みの方、離婚協議書の作成を検討されている方は、ぜひベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士にご相談ください。
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