風評被害をなくすには、何をすればいい? 企業が実施すべき対策とは
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近年では、インターネットやSNSなどで簡単に情報を発信できるようになったことに伴い、風評被害が生じるリスクも高まっています。誤った情報がインターネットやSNSなどに投稿されてしまうと、あっという間に拡散し、取り返しのつかない事態になることもあります。
このような風評被害を防ぐためには、事前から対策を講じることが大切です。また、もし風評被害が生じてしまったとしても、適切な対応をとることにより、被害を最小限に抑えられる可能性があります。
本コラムでは、風評被害をなくすために企業が実施すべき対策や風評被害が生じた場合の対応方法などについて、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士が解説します。
1、風評被害の種類
まず、企業や商店などを対象とした風評被害の種類を紹介します。
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(1)インターネットでの風評被害
だれでも簡単に情報を発信することができる場所であるために、インターネット上の情報には、誤った情報や悪意のある内容が含まれることもあります。
このような誤った情報などが掲載されていると、その情報を閲覧する人たちが真偽を適切に判断することができず、誤った情報であるにもかかわらず正しいものと認識してしまうおそれがあります。
その内容が企業の社会的信用を害するようなものであれば、風評被害が生じる原因となるでしょう。 -
(2)事件や事故による風評被害
会社には責任がないが実際に起きた事件や事故が、風評被害の原因となることがあります。
たとえば、自社の従業員が仕事とは関係のないプライベートで犯罪を行い、逮捕され報道された場合などには、自社の商品の買い控えなどの行動にでる消費者もいます。
そのような行動が広がれば、売り上げの減少などの実害が生じてしまうおそれもあるでしょう。 -
(3)報道による風評被害
新聞やテレビ、週刊誌などのマスメディアによる報道は、一般的に、インターネット上の情報よりも信頼性が高いと考えられています。
そのため、自社にとってネガティブな報道がなされた場合には、その影響は多大なものとなる可能性があるのです。
報道の内容が事実であったり中立的なものであったりしたとしても、その報道を視聴した人が過度に悪印象を抱いてしまう場合もあるため、マスメディアによる報道にはとくに注意が必要です。
2、風評被害をなくすには、どうすればいい?
以下では、風評被害を防止するための対策について解説します。
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(1)風評被害が起きた場合の対応マニュアルの作成
風評被害が発生した場合には、企業として適切な対応をとることが求められます。
対応が遅れてしまったり誤った対応をしたりしてしまうと被害の拡大を招くおそれがあるため、問題が起こる前から、「風評被害が起きた場合の対応マニュアル」を作成しておくことをおすすめします。
対応マニュアルがあれば、それにしたがって対応を行うことで、事態を適切に解決しやすくなります。
また、社会情勢やメディアの状況などの変化に対応するために、マニュアルを定期的に見直して改定することも大切です。 -
(2)従業員の不祥事を防ぐためのリテラシー教育
風評被害は、従業員の不祥事などによっても生じることがあります。
従業員が原因の風評被害を防ぐうえでは、従業員のリテラシー教育を実施することが有効な手段となります。
具体的には、以下のような問題を予防するためのレクチャーや研修を充実させることが、風評被害の予防につながります。- 情報漏洩
- メールの誤送信
- 外部からの不正アクセス
- SNSなどの炎上
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(3)SNS運用のマニュアルの作成
企業のSNSの更新は、主に従業員が対応することになりますが、安易な投稿によって炎上してしまうと企業としてのブランドイメージが傷付くおそれもあります。
SNS運用のマニュアルを作成しておけば、SNSが原因の風評被害を防ぎやすくなります。
また、「投稿する前に二人以上の担当者によるダブルチェックを行う」といった具体的なルールを定めておくことも有効です。
3、風評被害が起こってしまったときは、まず何をするべきか?
以下では、風評被害が生じてしまった場合にとるべき対応を解説します。
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(1)事実確認
風評被害が生じてしまった場合には、まずは、以下のような事実について確認を行う必要があります。
- 風評被害が事実であるか
- どのような経緯、原因で風評被害が生じたのか
- 風評被害がいつ生じたのか
- 風評被害によってどのような損害が生じているのか
風評被害の初期段階でしっかりと事実確認ができていれば、その後の対応もスムーズに進やすくなります。
風評被害に対する企業としての見解を公表するより前に、十分な事実確認を行うことが大切です。 -
(2)企業としての公式見解の公表
事実確認ができたら、速やかに自社の公式見解を公表しましょう。
自社に対するネガティブな情報が事実に反する内容であった場合には、その旨と今後の対応方針を公表してください。
また、情報が事実であった場合には、再発防止に努める旨の公表をすることによって、風評被害による影響を多少なりとも緩和することができます。
公式見解を公表する媒体としては、自社のウェブサイトやSNSアカウントなどがあります。
また、風評被害の程度が重大である場合には、速やかに事態を収拾するために、記者会見や謝罪会見なども検討する必要があります。 -
(3)情報の発信者の特定
デマの情報を流されたことによって風評被害が生じた場合には、デマの情報を流した人物に対して、法的な責任を追及することを検討しましょう。
ただし、匿名による情報発信が原因である場合には、情報の発信者を特定するためには、「発信者情報開示請求」という手続きをとる必要があります。
発信者情報開示請求を行えば、情報を発信した人物のIPアドレスの開示やプロバイダの特定を通じて情報を発信した人物の住所や氏名を開示させて、個人を特定することができます。
4、風評被害の回復方法
以下では、デマなどによる風評被害を受けた場合に、被害の回復するための方法を解説します。
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(1)情報の削除請求
まず、風評被害のもとなった情報がインターネット上にある場合には、すぐに削除させることが重要です。
インターネットでは情報が拡散されてしまいやすいため、誤った情報や悪意のある内容を放置すると、風評被害が拡大したり再発したりするおそれがあります。
被害の拡大を防ぐためにも、迅速に削除させることが大切です。
具体的には、以下のような方法を検討してください。- 情報の発信者に直接連絡をして削除依頼
- ウェブサイトの削除フォームを利用した削除依頼
- ガイドラインにのっとった削除依頼
- 情報の削除の仮処分申し立て
- 情報の削除請求訴訟の提起
裁判外の削除請求であれば企業の担当者でも対応することはできますが、裁判上の削除請求に関しては、弁護士のサポートがなければ適切に進めていくことは困難です。
情報が削除される可能性を高めるためにも、風評被害に気付いたら、すぐに弁護士に相談してください。 -
(2)損害賠償請求
風評被害によって企業に損害が生じた場合には、風評被害の原因となった人物に対して、損害賠償を請求することができます。
ただし、損害賠償を請求する際には、被害を受けた企業の側で風評被害と損害との因果関係を立証しなければなりません。
また、売り上げの減少などの損害については因果関係の立証が難しいケースも多いため、弁護士のサポートを受けることをおすすめします。
なお、損害賠償請求だけでは風評被害によって生じた企業の社会的評価の低下を回復できないという場合には、損害賠償請求とあわせて謝罪広告の掲載などの名誉回復措置を求めることができる可能性もあります。 -
(3)刑事告訴
風評被害を生じさせた加害者に対しては、信用毀損(きそん)罪または業務妨害罪が成立する可能性があります。
加害者に対して、刑事責任を追及することを検討している場合には、警察に刑事告訴を行いましょう。
刑事告訴をすることによって、警察による捜査が開始し、犯罪として起訴されれば、刑事裁判によって刑事処分が下されます。
刑事告訴では、企業が被った被害の回復はできませんが、企業が風評被害に対して厳しい姿勢で対応することを世間に示すことができれば、再発防止といった効果が期待できます。
風評被害をなくすには、刑事告訴も有効な手段といえるでしょう。
5、まとめ
風評被害を予防するためには、マニュアルの作成や従業員の教育など、日ごろからの対応が大切です。
また、もし風評被害が発生してしまった場合には、迅速かつ適切な対応によって風評被害による損害を最小限に抑える必要があるため、速やかに弁護士に相談することをおすすめします。
企業の経営者や担当者で、風評被害に対する対策を検討されている方や実際に起こってしまった風評被害への対応に悩まれている方は、まずはベリーベスト法律事務所までご連絡ください。
企業法務の経験豊富な弁護士が、風評被害による会社への被害を予防・回復するためにサポートします。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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