仕事中に居眠りをしてクビに! 不当解雇になるケースとは?
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仕事の疲れがたまると、会議中などの勤務時間内でも、つい居眠りしてしまうことがあります。眠りは生理現象ですので、状況によってはやむを得ない面もありますが、仕事中に居眠りをしてしまうと会社からの評価を落とすおそれがあります。
ただし、仕事中の居眠りであっても、原因が会社にある場合には、居眠りを理由に解雇などの不利益処分を下すことが違法と判断されるケースもあります。
今回は、仕事中の居眠りを理由とする解雇の有効性やクビにされた場合の対処法などについて、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士が解説します。
1、仕事中に居眠りをしたらクビになる?
仕事中に居眠りをしてしまったらクビになってしまうのでしょうか。以下では、仕事中の居眠りと解雇との関係について説明します。
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(1)仕事中の居眠りが解雇理由になるのか?
労働者は、労働契約上の義務として、勤務時間中は業務に集中しなければならないという義務(職務専念義務)を負っています。
仕事中に居眠りをすることは、この職務専念義務に違反することになりますので、会社から、以下のような不利益処分を受ける可能性があります。- 人事評価の低下
- 居眠りによる欠勤控除
- 懲戒処分
- 解雇
ただし、会社が居眠りをした労働者に対して、懲戒処分や解雇をするには、就業規則にその根拠が明記されていることが必要です。
たとえば、就業規則に「勤務状況が著しく不良で改善の見込みがなく労働者としての職責を果たし得ないとき」のような記載があった場合には、居眠りが解雇理由になる可能性があります。 -
(2)解雇の有効性の判断基準
居眠りが就業規則上の解雇理由に該当するとしても、会社が労働者を解雇するには、解雇に客観的に合理的な理由があり社会通念上相当であるといえなければなりません(労働契約法16条)。
解雇は、労働者にとって重大な不利益処分になりますので、その有効性は厳格に審査されることになります。
居眠りをすることは職務専念義務に違反する行為といえますが、居眠りによる解雇が社会通念上相当であるかは、以下のような要素を踏まえて、総合的に判断されます。- 居眠りの回数、頻度、時間
- 居眠りによる業務や他の労働者への影響
- 注意指導による改善の有無
- 本人の反省の程度
2、不当解雇にあたるケース
仕事中に居眠りをしてしまったとしても、以下のようなケースでの解雇は、不当解雇にあたる可能性があります。
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(1)過酷な労働環境が原因で居眠りをした場合
長時間労働が常態化している会社では、労働者は、十分な睡眠をとることができず、疲労が蓄積していきます。
疲労の蓄積がピークに達すると、仕事中であってもつい居眠りをしてしまうことがあります。このような場合、居眠りをした労働者自身に落ち度があるとはえいませんので、居眠りを理由に解雇をすると不当解雇にあたる可能性があります。 -
(2)精神的な不調により居眠りをした場合
居眠りの原因が労働者の精神的な不調や睡眠障害といった病気が原因である場合には、居眠りを理由に解雇することは不当解雇にあたる可能性があります。
このような精神的な不調がある場合には、休職制度を利用するなどして、治療を行い、治癒した時点で復職を認めるなどの対応が必要になります。
なお、精神的な不調が業務によって生じた場合には、療養のために休業している期間およびその後30日間は、原則として解雇することはできません(労働基準法19条)。 -
(3)解雇に相当性がない場合
居眠りを理由に解雇するためには、解雇という処分を選択することが社会通念上相当であるといえなければなりません。
たとえば、たった一度だけの居眠りであった場合や居眠りを注意して改善が見られた場合などでは、居眠りを理由に解雇することは社会通念上相当とはいえず、不当解雇になる可能性があります。
3、居眠りを理由にクビになった場合の注意点と対処法
居眠りを理由にクビになってしまった場合には、以下のような点に注意し、対処する必要があります。
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(1)退職合意書にサインしない
居眠りを理由にクビになった場合であっても、会社から退職合意書へのサインを求められることがあります。
しかし、解雇に納得がいかない場合には、退職合意書にサインをしてはいけません。なぜなら、退職合意書にサインをしてしまうと、解雇ではなく、合意退職という形になりますので、後日、不当解雇を理由に解雇の有効性を争うことができなくなってしまうからです。 -
(2)解雇理由証明書の交付を求める
居眠りを理由にクビになってしまった場合には、まずは、会社に解雇理由証明書の交付を求めましょう。
解雇理由証明書とは、どのような理由で解雇されたかが記載されている書類です。
労働者としては、正確な解雇理由を把握しなければ、解雇の有効性を争うことができません。また、会社側が後日別の解雇理由にすり替えて解雇の正当性を主張するおそれもありますので、解雇された時点の解雇理由を明確にしておくことが大切です。
解雇理由証明書は、労働者側から交付請求をしなければ発行されない書類ですので、解雇された場合には、忘れずに交付請求をしましょう。 -
(3)不当解雇を理由に解雇の撤回を求める
居眠りを理由とする解雇が不当解雇にあたる場合、会社に対して解雇の撤回を求めていきます。
解雇が無効であると、解雇日以降も労働者としての地位が認められますので、解雇日以降の未払い賃金も請求するのが一般的です。
不当解雇を理由に解雇の撤回を求める場合には、まずは会社との話し合いによる解決を目指しますが、会社が話し合いに応じてくれない、話し合いでは納得いく解決ができない、といった場合は、裁判所に労働審判の申立てや訴訟提起をしていくことになります。 -
(4)弁護士に相談する
仕事中の居眠りを理由とする解雇が不当解雇にあたるかどうかは、法的判断が必要になりますので、まずは弁護士に相談しましょう。弁護士に相談をすれば、会社による解雇が不当解雇であるかどうかが適切に判断できます。
弁護士は不当解雇を争う際の心強い味方になり得ます。不当解雇を弁護士に相談するメリットは、次章でも詳しく解説します。
4、不当解雇でお困りの場合は弁護士にご相談ください
不当解雇でお困りの場合は、弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に相談するメリットは主に以下の3つがあります。
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(1)解雇の有効性を判断してもらえる
居眠りをすることは職務専念義務違反となりますので、解雇理由に該当する可能性があります。
しかし、居眠りが事実であったとしても、居眠りの原因が過酷な労働環境にあったり、居眠りをしたといっても悪質なものでなかったりする場合には、解雇までは認められません。
このように、居眠りを理由として解雇されたとしても、具体的な経緯や理由によっては、解雇の有効性を争うことができる場合もあります。解雇の有効性の判断にあたっては、法的判断が必要になりますので、まずは弁護士に相談するようにしましょう。 -
(2)会社との交渉の窓口になってもらえる
仕事中の居眠りを理由とする解雇が不当解雇にあたる場合には、会社に対して、解雇の撤回を求めていくことになります。
しかし、労働者個人で、「居眠りは悪質なものでない」、「居眠りの原因は会社にある」と主張しても、会社側が取り合ってくれない可能性があります。
このような場合には、弁護士に依頼することをおすすめします。弁護士が会社との交渉の窓口となれば、会社も対応せざるを得ない状況になります。また、法的観点から不当解雇を指摘されれば、解雇を撤回してもらえる可能性も高まるでしょう。 -
(3)労働審判や裁判も対応できる
会社との話し合いで解決できない問題は、裁判所に労働審判の申立てをしたり、訴訟提起によって解決を図ったりする必要があります。
労働審判や裁判は、非常に専門的な手続きですので、一般の方では、手続きを適切に進めていくのが困難といえます。しかし、必要な証拠を提出し、必要な事実を主張していかなければ、勝てるはずの裁判でも負けてしまうリスクがあります。
労働者としての正当な権利を実現するためにも、労働審判や裁判といった手続きは、弁護士に依頼することをおすすめします。
5、まとめ
仕事中に居眠りをしてしまうと、職務専念義務違反になりますので、昇進や昇給に影響が生じる可能性があります。
しかし、数回の居眠りを理由に解雇することは不当解雇にあたる可能性もあります。解雇に納得できない場合は、まずは弁護士に相談し、不当解雇の可能性はないか判断した上で、しっかりと争っていくことが大切です。
仕事中の居眠りを理由にクビになってしまった方、会社から不当解雇をされそうでお困りの方は、まずはベリーベスト法律事務所 浜松オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています