相続不動産を放置するリスク|相続登記をするべき理由を解説
- 遺産を受け取る方
- 不動産
- 相続
- 放置
静岡県内には、静岡地方法務局として1つの本局と10の支局・出張所が存在しています。浜松市内にある不動産については、静岡地方法務局浜松支局が管轄となり、不動産登記の対応をしています。
亡くなった方の不動産を相続した場合には、不動産の名義変更をしなければなりません。これを「相続登記」といいます。現行法では、相続登記をしなかったとしても、罰則がありませんので、不動産を相続しても相続登記をせずに長期間放置しているというケースも少なくありません。
しかし、相続登記を放置しているとさまざまなデメリットがありますので、不動産を相続した場合には、速やかに相続登記を行うことが大切です。
今回は、相続登記をするべき理由と相続登記の手続きについて、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士が解説します。
目次
1、相続不動産を放置しているとどうなるのか
相続した不動産の名義を変更せずにそのままの状態にしていると、以下のようなデメリットが生じます。
-
(1)不動産の売却ができない
相続した不動産をそのままの状態にしていると、不動産の名義は、亡くなった被相続人名義のままとなります。土地や建物を売却する際に、「この不動産は自分のものです」と言ったとしても、登記上は被相続人名義となっていますので、本当にその人が不動産を相続したのかがわかりません。
不動産のような高価なものについては、所有者がはっきりしない人からの購入は敬遠してしまいますので、不動産を売却しようとしても売ることが難しくなってしまいます。 -
(2)権利関係が複雑になる
相続が発生すると被相続人名義の不動産は、遺産分割協議が成立するまでの間、相続人全員が法定相続分によって共有することになります。
相続した不動産の名義を変更せずに長期間放置していると、相続人が死亡することによって別の相続が発生する可能性があります。
そうすると、不動産の共有者が次から次へと増えていくことになりますので、相続登記をしようと思っても、誰が共有者であるかわからないなど権利関係が複雑になってしまうことがあります。
また、不動産を共有している相続人が認知症になってしまった場合には、そのままの状態では遺産分割手続きを進めることができず、成年後見人の選任などの複雑な手続きを要することもあります。 -
(3)登記に必要な書類の取得が難しいことがある
長期間相続登記をせずに放置している不動産の相続登記をする場合には、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を取得して相続人調査を行う必要があります。
除籍謄本の保存期間は、80年とされていましたが、法改正によって150年まで延長されることになりました。
しかし、市区町村によっては、法改正前に保存期間を経過した時点で、除籍謄本などを順次廃棄しているところもありますので、除籍謄本の交付申請をしたとしても、取得することができない場合もあります。
長期間放置することによって、登記に必要となる書類を取得することができないといったデメリットもあります。
2、相続登記の手続き
相続登記をする場合には、以下のような手続きが必要になります。
-
(1)不動産の情報を集める
相続が開始した場合には、相続の対象となる不動産を特定するために、不動産に関する情報を集めます。
その際に必要となる書類としては、以下の書類が挙げられます。- 固定資産納税通知書
- 固定資産課税台帳(名寄帳)
- 不動産登記事項証明書
-
(2)戸籍関係書類を集める
被相続人による遺言書が残されていない場合には、被相続人名義の不動産は、相続人による遺産分割協議によって分けることになります。そのため、遺産分割協議をする前提として、誰が相続人になるのかを確定しなければなりません。
相続人を確定させるためには、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本を取得する必要があります。相続登記を放置しているケースでは、亡くなった方が不動産の名義人ではないというケースもあります。
このような場合には、先代や先々代の相続までさかのぼって、戸籍関係書類を収集する必要がありますので、非常に大変な作業となります。 -
(3)相続人全員で遺産分割協議を行う
相続人が確定した段階で、相続人全員による遺産分割協議を行います。遺産分割協議では、不動産を誰が、どのように相続するのかを相続人全員で話し合って決めていきます。
不動産を共有状態にしていると、後々トラブルが生じる可能性もありますので、できる限り、不動産は誰か1人の単独所有の形にしておきましょう。
遺産分割協議が成立した場合には、その後の相続手続きに必要となりますので、必ず、遺産分割協議書を作成するようにしましょう。 -
(4)登記申請に必要な書類を集める
遺産分割協議に基づいて、相続登記をする場合には、以下の書類が必要になります。
- 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本、改製原戸籍謄本
- 被相続人の住民票の除票(戸籍の附票)
- 相続人の戸籍謄本
- 不動産を相続する相続人の住民票
- 遺産分割協議書
- 印鑑証明書
- 相続関係説明図
- 相続登記申請書
- 固定資産評価証明書
-
(5)法務局に申請する
登記申請に必要となる書類が収集できた段階で、不動産所在地を管轄する法務局に相続登記の申請を行います。
申請の方法には、窓口申請、郵送申請、オンライン申請の3つがありますが、オンライン申請は登録などが必要となりますので、個人の方が申請する場合には、窓口申請か郵送申請の方法によって行います。
3、相続登記は2024年4月に義務化される
今後、相続登記は義務化されますので、放置している方は早めに対応することが必要になります。
-
(1)相続登記の義務化とは
これまでは相続によって不動産を取得したとしても、相続登記は義務ではなかったため、「費用がかかるから」、「手続きが面倒だから」などの理由で相続登記をせずに放置していた方も少なくないでしょう。
しかし、不動産登記法の改正によって、2024年(令和6年)4月1日から相続登記が義務化されることになりました。相続登記の義務化によって、相続により不動産を相続した相続人は、相続開始を知った日から3年以内に、相続登記の申請をしなければなりません。 -
(2)相続登記を放置した場合の罰則
相続登記の義務化によって、相続登記を放置した場合には、罰則が適用されることになります。具体的には、相続登記の申請義務のある方が正当な理由なく申請期限内に申請をしなかった場合には、10万円以下の過料に処せられることになります。
相続登記の罰則は、改正法の施行日以降に発生した相続だけでなく、それ以前に発生した相続についても適用されることになります。
改正前に発生した相続については、改正法の施行日(令和6年4月1日)から3年以内に相続登記をする必要がありますので、相続登記を放置しているという方は、早めに対応するようにしましょう。
4、放置している相続不動産がある場合に弁護士がサポートできること
相続登記を放置している不動産がある場合には、弁護士にご相談ください。
-
(1)面倒な手続きをすべて任せることができる
相続登記を放置している事案では、収集すべき書類も膨大な数になり、誰が相続人であるかもわからないようなケースもあります。このような状態になってしまうと、個人の方が適切に進めていくことは難しいといえますので、早めに相続トラブルの実績がある弁護士に相談をすることをおすすめします。
弁護士であれば、遺産相続に関する豊富な経験を有していますので、相続登記を放置しているような面倒なケースであっても、迅速かつ適切に対応することが可能です。面倒だからと言って後回しにしておくと、どんどんリスクが多くなってきますので、早めに対応するようにしましょう。 -
(2)遺産分割を有利に進めることができる
相続登記を放置している事案では、まずは相続人による遺産分割を行わなければなりません。
しかし、現金や預貯金とは異なり、不動産は物理的に分割することが困難な遺産であることから、不動産が相続財産に含まれる場合には、相続人同士による争いが生じやすくなってきます。
また、遺産分割においては、特別受益や寄与分といった制度もありますので、それらを適切に主張していくことによって、最終的な相続分を増やすことができる場合もあります。
弁護士であれば、法的観点から最大限有利な内容で遺産分割をまとめることができるように手続きを進めていくことができますので、少しでも有利な内容で遺産分割を成立させたいという場合には、弁護士への依頼が不可欠といえるでしょう。
5、まとめ
法改正によって相続登記が義務化されることになりましたので、現時点で相続登記を放置しているという方は、早めに手続きに着手する必要があります。
ベリーベスト法律事務所には、弁護士だけでなく、司法書士や税理士も在籍していますので、遺産分割の手続きから相続登記、相続税の申告までワンストップでサポートが可能です。不動産相続に関するお悩みは、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています