クーポンの不正利用は犯罪? 問われる罪と実際に逮捕された事例
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地域経済の活性化に向けた取り組みのなかで有効活用されているのが「クーポン」による割引や還元です。令和4年8月には「がんばろう!浜松市応援キャンペーン」が開催され、大手のキャッシュレス決済事業者が参加して浜松市内での買い物に対してポイントが還元されていました。(※現在は終了)
国やほかの地域も同じようなキャンペーンを展開していますが、一方で、クーポンによる割引や還元の不正も問題視されています。実際にクーポンの不正利用で警察に摘発された事例もあり、軽はずみな行動が犯罪になってしまう危険もあるので注意が必要です。
本コラムでは「クーポンの不正利用」に注目して、不正利用で成立する犯罪や逮捕の危険性、逮捕された場合の流れなどをベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士が解説します。
1、クーポンの不正利用は犯罪! 適用される罪名や法的な責任とは?
クーポンといえば、無料で配布されるものが多いです。「無料だし、どのように活用してもいいのでは?」と軽い気持ちで不正利用してしまうケースがあります。もしクーポンを不正利用した場合、どのような罪になり、どういった責任を負うのでしょうか?
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(1)クーポンの不正利用は刑法が定める犯罪にあたる
クーポンの不正利用は、どのような罪になるのかは不正利用の態様によって異なります。大きく分けると、次の2つのかたちに分類できるでしょう。
● 虚偽の申請などでクーポンを不正に入手し、使用するケース
本来は入手できないはずのクーポンを、以下のような不正な方法で入手するケースです。- 刑法第246条の「詐欺罪」
身分を偽って紙のクーポンを入手 - 刑法246条の2の「電子計算機使用詐欺罪」
多数のメールアドレスやアカウントを使って不正に電子クーポン・オンラインクーポンを入手
また、他人がもっていたクーポンをこっそり盗めば第235条の「窃盗罪」が成立することもあります。通常、窃盗罪の対象となるのは金銭的な価値のある財産に限り、飲食店のドリンクサービス券や「〇〇円割引券」といったクーポンは含まないと考えるのが定石です。ただし、“金券扱いになるクーポンはそれだけでも金銭的な価値があるので、財物として保護される可能性”もあると考えられます。
● 利用条件に反しているのに正当な利用であるかのようにクーポンを使用するケース
クーポンに利用条件が設けられており、条件に合致しないのにまるで利用可能な対象者であるかのように装ってクーポンを不正に使用する方法です。
「おひとりさま1回限り」という利用条件があるのに初めて使用するかのように装って無料の商品をもらえば「だまし取った」ことになるので刑法第246条の詐欺罪に問われます。
また、商品などをだまし取っていなくても不正に代金の割引を受ければ詐欺罪の処罰対象です。正規の価格の支払いを免れたという財産上不法に利益を得ているためで、これを「二項詐欺」といいます。
詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪の法定刑は、いずれも10年以下の懲役です。窃盗罪が成立する場合、10年以下の懲役または50万円以下の罰金が科せられます。 - 刑法第246条の「詐欺罪」
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(2)不正利用で得た利益は「損害」として請求されるおそれがある
クーポンの不正利用を許してしまうと、クーポンを発行している会社や団体は大きな打撃を受けてしまいます。
少額なら注意を受けたり、発覚した時点でクーポンを無効化されたりするだけで済むかもしれません。しかし、多額の損害を与えたケースや公的に発行されるクーポンを不正利用したなど社会的に注目を集めるようなケースでは、徹底した調査によって被害額が算出され、損害賠償請求を受けるおそれがあります。
損害を賠償するのは「民事」の面における責任であり、犯罪として刑罰を受けて「刑事」の面で償いを果たしたとしても免除されません。
同様に、謝罪して賠償し民事責任を果たしても、不正利用という犯罪に遭った被害者が被害届や刑事告訴に踏み切った場合は刑事責任を追及されることになります。
2、クーポンの不正利用は逮捕される?
これまでにクーポンの不正利用をしたことがある方なら、犯罪にあたると知れば「逮捕されるかもしれない」という不安を感じるでしょう。クーポンの不正利用で逮捕されることはあるのでしょうか?
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(1)クーポンの不正取得で逮捕された実例
クーポンの「不正利用」で逮捕されることもあり得ますが、その前段の行為としての「不正取得」に着目して事件化され、逮捕を受けた実例も存在します。
令和2年11月、政府の観光支援策「Go Toトラベル」キャンペーンにおいて配布された「地域共通クーポン」を不正に取得した男が、電子計算機使用詐欺罪の疑いで逮捕されました。
同キャンペーンで配布されたクーポンには「紙クーポン」と「電子クーポン」の2種類があり、そのうち電子クーポンは宿泊施設にチェックイン前でも発行されるシステムでした。
逮捕された人物は、前日までに宿泊施設を予約し、当日に電子クーポンを得たあとで宿泊を無断キャンセルするという手口で不正取得を繰り返していたそうです。
同じく電子計算機使用詐欺罪の容疑で逮捕された実例として、宅配注文サイトの初回登録時に配布される割引クーポンを、複数のアカウントを利用してのべ90回にわたり不正に取得した人物も逮捕されています。
いずれも「不正利用」による立件ではなく「不正取得」に着目した事件ですが、不正利用を繰り返していると不審に感じたクーポン発行元から疑われて調査され、不正取得が発覚し、逮捕されてしまうかもしれません。 -
(2)クーポンの不正は危険! 実刑判決を受けたケースもある
クーポンに関する不正行為を軽く見てはいけません。
先に挙げた「Go Toトラベル」キャンペーンのクーポン不正取得事件では、令和3年3月に東京地裁で判決が言い渡され、懲役1年6か月の実刑判決が言い渡されました。
詐欺罪・電子計算機使用詐欺罪は、刑法の定めで懲役しか予定されていない重罪なので、有罪判決を受けるとかならず懲役が言い渡されます。
実際に立件されて刑事裁判で追及されたのは72万9000円相当の不正取得の件だけでしたが、無断キャンセルを受けた宿泊施設側の損害は総額500万円を上回っており、とくに悪質だと判断されたようです。
クーポンによる割引や特典を得られたり、お金と同様の価値があったりしても、不正行為が問題となって刑罰を受けてしまい、損害賠償請求を受けるようではかえって損をします。発行元の利用規約や利用条件を守って、適正な利用を心がけましょう。
3、警察に逮捕されるとどうなる? 刑事手続きの流れ
クーポンの不正利用が問題となって警察に逮捕されると、その後はどうなってしまうのでしょうか?
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(1)最大72時間の身柄拘束を受けて面会も許されない
警察に逮捕されると、法律の定めに従って身柄を拘束されます。
警察の段階で48時間以内、さらに検察官へと引き継がれて24時間以内、合計すると逮捕による身柄拘束の期間は最大で72時間です。
この期間は、警察署の留置場で寝食しながら警察官の取り調べを受けたり、検察庁へと移送されて検察官による取り調べを受けたりするので、一時たりとも気が休まりません。
しかも、留置場へと収容される時点で私物はすべて預かり扱いになります。携帯電話・スマホを使って家族などに連絡することは許可されていません。
さらに、逮捕後72時間以内は家族・友人・同僚などとの面会も許されず、自由に面会できるのは弁護人だけです。 -
(2)さらに最大20日間の身柄拘束を受けるおそれもある
逮捕による72時間以内の身柄拘束が終わっても、まだ安心できません。検察官が「まだ身柄拘束を続ける必要がある」と判断して「勾留」を請求し、裁判官がこれを許可してしまうと、初回で10日間、延長でさらに10日間以内、合計で10~20日以内の身柄拘束を受けます。
引き続き警察署の留置場で生活することになり、警察官や検察官の厳しい取り調べを受けるため、心身ともに疲弊してしまうはずです。
また、勾留が決定したあとはとくに禁止されない限り面会が許されるようになりますが、時間や回数が強く制限されます。社会から隔離された状態が長く続くので、家族・会社・学校などの復帰にも不安を感じることになるでしょう。 -
(3)起訴されると刑事裁判が開かれる
勾留が満期を迎える日までに検察官が「起訴」すると、刑事裁判の被告人としてさらに勾留されます。被告人としての勾留は実質無期限で、一時的な釈放として「保釈」されない限り、刑事裁判が終了するまでは釈放されません。
刑事裁判では、数回の審理を経て裁判官が判決を言い渡します。ドラマなどフィクションの世界では、疑いをかけられながらも逆転無罪を得るといったストーリーが展開することがありますが、実際の刑事裁判ではきわめて高い割合で有罪判決が言い渡されているのが現実です。
4、クーポンの不正利用で容疑をかけられたら弁護士に相談を
クーポンの不正利用が発覚し、発行元から責任を追及されたり、警察に容疑をかけられたりしているなら、今すぐ弁護士に相談しましょう。
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(1)逮捕を回避するための弁護活動が期待できる
弁護士に相談すれば、逮捕を回避するための弁護活動を依頼できます。
逮捕を避けるためにもっとも効果的なのは、被害者となるクーポン発行元との示談交渉です。不正利用や不正取得をはたらいたことを真摯(しんし)に謝罪したうえで、不正行為によって与えてしまった損害分を賠償し、被害届や刑事告訴をしないように求めます。警察に発覚するよりも前に被害者との示談を成立させれば、逮捕されることも、刑罰を受けることもありません。
ただし、クーポンに関する不正行為について厳正に対処する姿勢を示している被害者と円満な示談交渉を進めるのは困難です。身に覚えのない損害の賠償まで求められてしまうことも考えられるので、代理人として交渉を任せられるうえに法的な防御の知識と経験をもつ弁護士のサポートは欠かせません。 -
(2)厳しい刑罰を避けるための弁護活動が期待できる
クーポンの不正利用や不正取得が刑事事件になった場合は、刑事裁判を経て刑罰が下されるおそれがあります。
不正行為に適用される犯罪は、いずれも厳しい刑罰が予定されているものばかりです。事件化が避けられず、警察の逮捕が予想される状況でも、かならず刑罰を科せられるわけではありません。
検察官が「不起訴」を選択すれば、刑事裁判は開かれないので刑罰を受ける事態も回避できます。また、刑事裁判に発展しても、深く反省し、被害者への謝罪や賠償を尽くせば刑罰が軽い方向へと傾く可能性もあります。
不起訴や処分の軽減を得るための対策も、やはり豊富な知識と多くの経験が必要です。離婚や家族との離縁、会社からの解雇、学校からの退学といった社会的な不利益を避けたいと望むなら、弁護士にサポートを求めましょう。
5、まとめ
クーポンの不正利用や不正取得は、単なるルール違反では済まされません。刑法で定められている犯罪にあたるおそれがあるほか、不正行為によって生じさせた損害を賠償する責任も負うことになります。
社会的な関心も強く、警察に逮捕されれば大々的に報道されたうえで厳しく処罰される危険があるので、不正行為の心当たりがあるなら今すぐ弁護士に相談しましょう。
クーポンの不正利用について逮捕や刑罰、賠償などの不安を感じているなら、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスにご相談ください。刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、さまざまな不利益を回避・軽減するために全力でサポートします。
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