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成年後見と保佐、補助の違いは? 浜松の弁護士が解説

2021年05月10日
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成年後見と保佐、補助の違いは? 浜松の弁護士が解説

高齢のご家族がいる方で、そのご家族の判断力が低下してきた場合、身の回りの方はさまざまなサポートの必要がでてきます。

判断力・認知能力が衰えた状態で、ひとりで行動してしまうと、現代の契約社会において不利益を被る可能性があります。また、高齢者を狙った犯罪にもひっかかってしまいやすく、危険な状態です。

そこで、このように判断能力が低下してしまった人をサポートする制度として、「成年後見制度」がありますので、これを利用することもひとつの手です。

浜松市では、成年後見制度利用支援事業も行っています。
今回は、成年後見や保佐・補助の概要、利用手続きの流れなどについて解説いたします。

1、成年後見、保佐、補助の違い

  1. (1)制限行為能力者とは

    私たちは、日常生活を送るにあたって、さまざまな法律上の意思表示を行います。たとえば、スーパーで商品を購入するにあたっても、購入の意思表示を行っています。賃貸物件に住む際の賃貸借契約に際しても、その物件を借りるという意思表示を行っています。

    このような意思表示を確定的に行うためには、その行為をするための判断力を持っている必要があります。そうでなければ、あとになって、意思表示した人自身が不利益を被りかねません。

    しかし、各人の行為ごとに、この人は判断能力が十分なのかどうかという判定を求めることは容易ではなく、現実的ではありません

    そこで、民法では、単独で確定的な意思表示をなしうる能力(行為能力)が不足しているとみられる人を定型化しています。このような人を、「制限行為能力者」といいます。

    制限行為能力者には、保護者を付けて能力不足を補わせる半面、保護者の権限を無視して行った制限行為能力者の行為を取り消すことができます。このようにして、制限行為能力者は保護されています。

    民法上の制限行為能力者の中には、未成年者・成年被後見人・被補助人・被保佐人があります。

  2. (2)成年後見制度とは

    成年後見制度は、認知症、知的・精神障害などによって、行為能力が十分でない方について、保護者を付けてその方を保護する制度です。民法上の成年後見制度の利用にあたっては、家庭裁判所に申し立てを行い、家庭裁判所が決定を下し、本人を援助する方を選任します。

    本人を援助する制度には3つのタイプがあります。

    ●成年後見
    成年後見とは、精神上の障害により、物事を判断する能力を常に欠いている状態の方で、家庭裁判所が後見開始の審判を下した方(成年被後見人)を成年後見人が援助する制度です。

    成年後見人は、成年被後見人となった本人の代わりに契約を結ぶことや、本人の意思表示の取り消しなどを行うことができます
    ただし、日用品の購入その他日常に関する行為については、成年被後見人の方自身で確定的に有効な行為ができ、成年後見人が取り消すことはできません

    ●保佐
    保佐とは、精神上の障害により、物事を判断する能力が著しく不十分な状態の方で、家庭裁判所が保佐開始の審判を下した方(被保佐人)を保佐人が援助する制度です。

    保佐人は、被保佐人が一定の重要な行為をする場合に同意をしたり、被保佐人が保佐人の同意を得ずに一定の重要な行為をした場合に取り消したりすることができます

    ●補助
    補助とは、精神上の障害により、物事を判断する能力が不十分な状態の方で、家庭裁判所が補助開始の審判を下した方(被補助人)を補助人が援助する制度です。

    補助人は、被補助人が希望する一定の事項について、同意権や取消権があります

  3. (3)任意後見制度

    上記の成年後見制度以外にも、判断能力が十分にある間に、契約によって、判断能力が不十分となった場合の後見人を選任しておく、任意後見制度というものもあります。

    任意後見制度を利用するためには、その契約は公正証書でしておく必要があるとともに、契約の効力を発生させるには、家庭裁判所が任意後見監督人を選任する必要があります。

2、後見制度のはじめ方

  1. (1)家庭裁判所に申し立てをする

    後見制度の申し立てができるのは、本人、配偶者、4親等内の親族、成年後見人等、任意後見人、任意後見受任者、成年後見監督人等、区市町村長、検察官です。

    申し立てにあたって必要となる裁判所への手数料や、行為能力の程度を確認するための鑑定費用などは原則として申し立てる人の負担となります。鑑定には10万から20万円程度の費用がかかります(ただし、裁判所の判断で本人の財産から清算できる場合があります)。

    申し立ては、家庭裁判所所定の書式を利用して行う必要があります。裁判所ごとにひな形が異なりますので、まず管轄の裁判所を確かめてから、裁判所のホームページでダウンロードするなどして入手しましょう。

  2. (2)家庭裁判所の職員による面接・調査

    家庭裁判所の職員が、申立人や後見人等候補者から申し立てに至った経緯や本人の現状などの事情を聴取します。

    また、成年後見制度では、本人の意思尊重の観点から、家庭裁判所の職員が原則として、直接本人に話を聞きます。本人が裁判所に行ける場合は裁判所で、入院などで裁判所に行けない場合は、その病院などで話をします。

    本人に親族がいる場合、その親族に対して、書面などで意向調査がなされる場合があります。

    さらに、本人の判断能力を測るために、精神鑑定を行います。多くの場合は、本人の状態をよく理解している主治医が行うことになります。本人の状態などによっては行わないこともあります。

  3. (3)審理・審判

    裁判官は、申立人から提出された書類や、本人との面接結果、鑑定結果などの事情を総合的に考慮して後見人等を選任します。そのため、申し立てで希望した、後見人等の候補者以外の人が後見人等になることもあります

  4. (4)成年後見人(保佐人、補助人)としての仕事のはじまり

    成年後見人等は、就任後、本人の意思を尊重するとともに、心身の状況や生活の状況に配慮して、適切に財産の管理などの事務を行っていくことになります。

    財産目録や、後見事務報告書などの書面を家庭裁判所からの求めに応じて提出することとなります。

    成年後見人等は、本人の保護をすることが仕事ですので、財産を勝手に譲渡するなど、本人の利益に反する行為はできません

    成年後見人等は、その仕事の内容に応じて、被後見人等の財産から報酬をもらうことができます。その場合は、報酬付与の審判を申し立てる必要があります。報酬の額については、裁判官が事情を総合的に考慮して決めますが、標準的な報酬額の目安を決めている家庭裁判所もありますので、裁判所のホームページをご確認ください。

3、本人と後見人・保佐人・補助人との間でトラブルが起こった場合はどうする?

  1. (1)成年後見人等の事務が負担となった場合

    成年後見は、自分以外の人の財産や生活を守るという責任のある仕事なので、負担が軽いとは言えません。

    家庭裁判所に成年後見人等に選任されたはいいが、思ったより大変なので辞任したい、という理由では、辞任は認められません。

    成年後見人等が辞任できるのは、正当な事由がある場合で家庭裁判所の許可が下りたときに限られます。

    たとえば、成年後見人等が高齢や病気になってしまい、後見事務を続けることが体調的に困難という場合には、正当な事由があると認められることが多いです。

    いったん利用し始めた成年後見制度をやめることは上記のとおり難しいので、成年後見人等になる前に、後見事務について事前に深く理解しておく必要があります。

    また成年後見人等が辞任するにあたっては、後任の成年後見人等に引き継ぎをする必要があります。

  2. (2)成年後見人等が財産などを不正に流用した場合

    成年後見人等が悪質な不正行為などのトラブルを起こしてしまった場合には、成年後見人等を解任されることがあります。解任されたときは、また新しい成年後見人等が選任されます。

4、弁護士ができること

  1. (1)成年後見等申し立ての援助

    成年後見等の申し立てにあたっては、多数の書面を作成して家庭裁判所に提出する必要があります。

    それらの書類の作成にあたっては、他の親族との折衝が必要な場合も生じてきます。

    弁護士は、申立書類の作成や、各種の書類の収集、裁判所同行するなどのサポートを行っています。

    成年後見人に就任される方が第三者であり、弁護士などの専門家の場合には、必要に応じて、情報の引き継ぎなども行っています。

  2. (2)弁護士による成年後見人等への就任

    成年後見人等を付けたいが、就任を希望する人がいない場合や、適切な候補者がいないなど、さまざまな理由で親族の中から候補者を選出することができない場合には、弁護士が後見人等の候補者になることもできます。

5、まとめ

今回は成年後見制度について、解説しました。

実際に制度の利用を希望の方は、まずは弁護士などに相談し、後見制度の利用という手段が目的にフィットするのかを確認しましょう。

また、実際に成年後見人になってから、こんな大変だと思わなかったというようなギャップが生じないように、成年後見人等になったあとのことについても確認する必要があります。

成年後見制度を利用したいとお考えの方は、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスへぜひご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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