留置場の面会│いつから・誰ができる・差し入れ方法など
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留置場とは、警察署の建物や敷地に置かれている被疑者の収容施設です。浜松市を中心とした静岡県西部地方には浜松中央・浜松東・浜松西・浜北・湖西・袋井・磐田・袋井・掛川・菊川・天竜の11署(2022年5月時点)があり、基本的に管内で逮捕された被疑者は各署の留置場に収容されます。
警察から「ご家族を逮捕した」という連絡が入ると、誰もが疑問や不安を感じると同時に、なんとかして面会したいと考えるでしょう。しかし、警察署での面会には時間・回数・人数などのルールが設けられているので、自由に面会というわけにはいきません。
本コラムでは「留置場の面会」に関するルールや注意点などを解説します。
1、面会の基本的なルール│曜日・時間・回数・面会できる人
警察に逮捕されて「勾留」による身柄拘束を受けている被疑者は、外部との面会が許可されます。
ただし、被疑者と外部の人との面会は無制限ではありません。事前に面会の基本的なルールを確認しておきましょう。
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(1)面会できる曜日・時間
面会が許可されるのは、警察署の執務日・執務時間内に限られます。月曜日から金曜日までの平日だけで、土曜日・日曜日・祝祭日は面会できません。
面会できる時間はおおむね午前9時から午後4時までの間ですが、警察署の運用によっては若干の差があります。また、留置場での被疑者の食事を確保するために、昼食にあたる午後0時から午後1時までの間も面会できません。被疑者の入浴日も面会ができない時間があります。 -
(2)一日の面会回数や制限時間
被疑者が一日に許可される面会の回数は1回だけです。つまり、誰かが面会をした日は、あとで面会を申し込んでも拒否されます。
面会の制限時間は15~20分程度です。実際に会話をしているとあっという間に制限時間がきてしまうので、尋ねておくべき事項があるなら事前にまとめておくことをおすすめします。
面会には警察官が必ず立ち会うことになります。会話内容にも制限があり、事件に関わることや不適切なことについて話すことは禁止されます。 -
(3)面会を許可される人
被疑者との面会が可能な人に制限はありません。
ただし、一度に面会できる人数は3人程度に制限されます。一日の回数に制限があるので、家族・親類などの面会ではできるだけ都合をあわせて一緒に行くようにしましょう。
なお、共犯者がいる事件や組織的な犯行による事件では、面会できる人が制限されることもあるので注意しなければなりません。
2、面会時の差し入れルール
面会の際には物品の差し入れも可能です。
ただし、留置場内に外部からの物品を入れることになり、留置されている被疑者の安全を確保する必要があるため、厳しい制限が設けられています。
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(1)差し入れが可能な物品
差し入れ可能な物品は次のとおりです。
- 衣服
- 本や雑誌
- 手紙
- 写真
- 便せん
- 現金
衣服は自殺防止のためにパーカやズボン類のひもを抜いておく必要があります。伸縮性素材の衣類や金具・ベルトがついている衣服も差し入れできないので、スエットやジャージの上下などがベターです。
本・雑誌なども差し入れ可能ですが、ホチキスでとじられているものは禁止されているので注意しましょう。ナンクロクロスワードパズルのような書き込みを前提とした本も差入れが禁止されていることが多いです。
手紙や家族の写真などは心細い状況におかれている被疑者にとってうれしい物品です。ただし、差し入れの際に内容をチェックされるので、事件にかかわる内容や不適切な内容を記載しないように気をつけましょう。
差し入れの際に大切なのが現金です。留置場内では、弁当・パン・菓子類などの「自弁」や洗面用具や便せん・封筒などを購入する際に現金が必要になります。また、遠方の警察署で留置された場合は釈放時の交通費も必要なので、ある程度の現金は必須です。
一度に2万円程度の現金を警察に預けるかたちで差し入れて、必要の都度、担当者が支出することになります。 -
(2)差し入れできない物品
次に挙げる物品は差し入れできません。
- 飲食物
- タオル
- チューブ入りの歯みがき粉・ボトル入りのシャンプー・ボディソープ・化粧品など
- タバコ
- 携帯電話やスマホ・ゲーム機などの機械類
- 医薬品
留置場には飲食物を適切に保管する設備がないので、飲食物の差し入れは禁止されています。
自殺防止の観点から、タオルも差し入れできません。歯みがき・洗顔・洗髪に必要な物品でも、チューブやボトルに入っているものは内容物が確認できないため禁止されます。
これらの生活必需品は、警察側で用意・管理されているものを使うか、警察を通して留置場から自費購入することになります。
警察の庁舎内は全面禁煙なので、留置場でもタバコは吸えません。過去には運動の時間や取り調べ中の喫煙が許可されていましたが、現在は火気の予防と受動喫煙防止の観点から全面禁止されているのでタバコの差し入れは不可です。
機械類も、外部との連絡や自傷・自殺防止の観点から禁止されています。
違法薬物の持ち込みを防ぐために、医薬品の差し入れは全面禁止されています。風邪・発熱・頭痛などの症状に効く一般的な市販薬は留置場内で担当者に申し出ればもらえるので、とくに困ることはありません。
ただし、持病がある、治療中に逮捕・勾留されたなど、市販薬では対応できない場合は、警察医の診察で薬を処方してもらうことになります。
3、面会の申し込み方法・注意点
警察署での面会を経験したことがある方は少ないはずです。面会の申し込み方法や注意点をまとめておきましょう。
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(1)警察署の留置場へ直接訪ねて申し込む|予約は不可
面会を申し込む際は、警察署の留置場の窓口を訪ねて直接申し込まなければなりません。
原則、電話などによる予約は不可です。
ただし、すでにほかの面会人によって当日の面会が終わっている、刑事手続きや捜査の都合で面会できないといった日もあるため、訪問前に電話をかけて当日の予定を確認したほうがよいでしょう。
警察署の代表番号に電話をかけて「留置管理課へつないでほしい」と伝えれば取り次いでもらえます。
電話予約は不可ですが、ご家族などによる面会希望がある場合はほかの希望者が訪ねてきた場合でも「すでに予定がある」と説明して後日にするよう差し向けてもらえるケースも多いようです。確約できるわけではありませんが、無駄足にならないためにも事前確認を心がけましょう。
なお、留置場は被疑者の出入りが人目にさらされないために、警察署のなかでも一般来庁者の目に触れにくい場所に設置されています。
庁舎内で右往左往していると不審がられてしまうので、初めて面会する際は総合窓口を訪ねて案内を受けたほうが安全です。 -
(2)身分証の提示が必要
面会できる人には制限がありませんが、どこの誰が面会したのかを明確にしなければならないため、身分証の提示は必須です。
運転免許証・健康保険証などを忘れずに持参しましょう。複数人による面会では全員の身分証が必要なのでご注意ください。 -
(3)取り調べなどの状況によっては拒否される
ご家族を含めて一般の方による面会は、刑事手続きや捜査の都合と比べると優先されません。
とくに、検察庁で検事による取り調べを受けている、現場確認や引き当たりなどの捜査で庁舎外にいるといった場合は、面会希望者が来庁しているといっても帰してはくれないので「本日は面会できない」と拒否されることもあります。
また、警察官による取り調べの最中も、取調官の裁量で一時中断をしてもらえない限り、終了まで待たなくてはなりません。取り調べの終了時刻によっては面会可能な時間を過ぎて当日の面会が不可となるケースもあります。
4、「接見禁止」になった場合の対応
身柄拘束を受けている被疑者にとって、外部の人との面会は権利として保護されています。
ただし、事件の内容次第では面会を禁止する「接見禁止」の決定が下されて、たとえご家族であっても面会が禁止されるケースがあるので注意が必要です。
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(1)接見禁止とは
「接見禁止」とは、弁護人以外の者による面会を禁止する裁判官の決定を意味します。
「接見」とは、被疑者や被告人が外部の人と面会することを指す法律用語です。
被疑者の逃亡や証拠隠滅を予防する観点から、外部との通謀を防ぐためのもので、共犯者が存在する、組織的な犯行であるといった事件で下されることがあります。面会の禁止と同時に手紙などの差し入れも原則禁止となります。
「接見禁止」が付されているかどうかは、警察署の留置管理課に電話をすれば教えてもらえることが多いです。 -
(2)一部解除を申請して家族の面会許可を求める
接見禁止の決定を受けている場合は、とくに事件に関与していないご家族でも被疑者との面会を一律に禁止されてしまいます。
この決定は裁判官によるものなので、身柄拘束の法的な効力がなくなるか、準抗告という不服申立の手続きが認められない限りは解除されません。
ただし、ご家族や恋人・婚約者などで、事件への関与がなく、逃亡や証拠隠滅の助けをする危険もないと判断される場合は、裁判官への申立てによって限定的に接見禁止が解除される可能性があります。
この手続きを接見禁止の「一部解除」と呼びますが、あくまでも裁判官が職権で許可するものであり、必ずしも一部解除されるわけではないという点には注意が必要です。
ご家族などに限って一部解除が認められるケースは多いため、積極的に申請することをおすすめします。
5、弁護士の面会(接見)は無制限
ご家族などの面会にはさまざまなルールや制限が設けられていますが、弁護士にはここまでで説明した制限がほとんどありません。身柄拘束を受けている被疑者には、弁護士と制限なく接見する権利が認められています。
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(1)弁護士の接見は曜日・時間・回数を制限されない
弁護士との接見には、曜日・時間・回数といった制限がありません。警察の閉庁日や執務時間外でも面会可能であり、一日に複数回の面会も可能です。
また、ご家族などとの面会では警察官が立ち会いますが、弁護士との接見では立ち会いがつかないので、気兼ねなく事件のことや不安なことを相談できます。
ご家族から本人への急ぎの伝言がある、本人がご家族に頼みたいことがあるといった場合の橋渡しとしても、無制限で接見できる弁護士の存在は重要です。 -
(2)不当な取り調べや処遇への対抗策になる
弁護士による接見希望は、取り調べなどの捜査の都合に左右されません。庁舎外にいるなど物理的に不可能な場合を除いて、弁護士の接見希望があるときはただちに取り調べなどが中断され、接見の時間が確保されます。
さらに、取調官や留置担当官は、被疑者が弁護士との接見を希望すればただちにその旨を弁護士に伝えなければなりません。
不当な取り調べを受けている、留置場で不当な処遇を受けているといった場合は、ただちに「弁護士を呼んでほしい」と伝えて接見を求めることで警察に対抗できます。 -
(3)逮捕直後の72時間以内でも接見可能
逮捕された被疑者がご家族など一般の方との面会を許されるのは、裁判官が「勾留」を決定したあとです。
逮捕後の48時間以内は警察の持ち時間であり、その後の24時間以内は検察官の持ち時間として刑事手続きが進められるので、この期間は接見禁止決定の有無にかかわらず面会が認められません。
逮捕後の48時間+24時間=72時間は、勾留を阻止するために極めて重要な期間です。
それにもかかわらず、ご家族などは面会を許されないので「手を尽くしたいのに会わせてもらえない」という状況になってしまいます。
弁護士による接見には、このような制限がありません。逮捕直後の72時間以内でも面会可能なので、取り調べに対するアドバイスや勾留阻止に向けた弁護活動など、早いうちから重要なサポートが可能です。
6、まとめ
警察に逮捕され、勾留されてしまった被疑者とご家族などとの面会にはさまざまなルールや制限があります。
面会可能な曜日や時間などを理解していないと、せっかく警察署を訪ねても無駄になってしまうかもしれません。また、本人を助けてあげたい一心から不自由のないように差し入れをしたいと考えるのも当然ですが、差し入れにも厳しい制限があります。
留置場での面会・差し入れについてわからないことや難しいと感じる点があれば、弁護士に相談してサポートを受けましょう。
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