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損害賠償命令制度とは?│手続きの流れや制度について解説

2023年04月24日
  • その他
  • 損害賠償命令制度
損害賠償命令制度とは?│手続きの流れや制度について解説

2020年に静岡県浜松市において認知された犯罪は3317件でした。犯罪は刑事事件として裁かれると同時に、民事事件として損害賠償を請求される可能性もあります。

「損害賠償命令制度」とは、犯罪被害者が加害者からスムーズに損害賠償を受けられるように設けられた制度です。損害賠償命令を申し立てると、損害賠償請求の審理が刑事公判手続き(刑事裁判)と同じ裁判所によって行われるため、迅速な審理が期待できます。

今回は損害賠償命令制度の概要について、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士が解説します。

出典:「浜松市統計書 令和3年版」(浜松市)

1、損害賠償命令制度とは?

損害賠償命令制度とは、刑事事件の被害者の簡易・迅速な損害回復を図るために、一定類型の犯罪について、刑事手続の結果を利用して損害回復するための制度です

  1. (1)損害賠償命令制度ができた背景

    犯罪行為からは民事責任と刑事責任の両方が発生し得ます。

    日本の裁判制度では、民事責任と刑事責任が分離しており、犯罪被害者が加害者に対して損害賠償を請求するには、原則として被害者が加害者に対して民事訴訟を提起しなければなりません。

    しかし、民事訴訟では、原告となる被害者が損害賠償請求権の存在を一から立証しなければならず、被害者の手続き負担が大きいことが問題視されていました。

    そこで、2007年に「犯罪被害者等の権利利益の保護を図る為の刑事訴訟法等の一部を改正する法律」が成立し、損害賠償命令制度が新設されました。

    損害賠償命令制度では、一定の犯罪に関する損害賠償請求の審理を、刑事公判手続きと同じ裁判所が担当します。事件の背景をよく理解している裁判所が、損害賠償請求の審理も続けて行うため、被害者が裁判所に対して説明する負担は大幅に軽減されます

    また、口頭弁論の実施が任意とされており(同法29条1項)、審理が原則として4回以内で終結する(同法30条3項)など、被害者の負担軽減に寄与する特例が設けられています。

  2. (2)損害賠償命令制度の対象となる犯罪

    損害賠償命令制度の対象となるのは、以下の犯罪に限定されています(同法23条1項)。

    1. ① 故意の犯罪行為により人を死傷させた罪、またはその未遂罪
      (例)殺人罪、傷害致死罪、傷害罪、強盗致死傷罪など

    2. ② 強制わいせつ、強制性交等、準強制わいせつ、準強制性交等、監護者わいせつ、監護者性交等の罪、またはその未遂罪

    3. ③ 逮捕・監禁の罪

    4. ④ 未成年者略取・誘拐、営利目的等略取・誘拐、身代金目的略取等、所在国外移送目的略取・誘拐、人身売買、非略取者等所在国外移送、非略取者引渡し等の罪

    5. ⑤ ①~④のほか、その犯罪行為に①~④の犯罪行為を含む罪(①~④に該当するものを除く)


    過失犯は損害賠償命令制度の対象ではなく、一部の故意犯のみが対象とされています。

2、損害賠償命令制度の手続きの流れ

損害賠償命令制度の手続きの流れは、以下のとおりです。

  1. ① 被害者等による申立て・申立書の送達
  2. ② 裁判所による審理|原則として4回以内
  3. ③ 裁判所による損害賠償命令


  1. (1)被害者等による申立て・申立書の送達

    被害者またはその一般承継人(相続人など)は、対象となる犯罪の刑事被告事件について、公判手続きにおける弁論が終結するまでの間、事件が係属する地方裁判所に対して損害賠償命令を申し立てることができます(同法23条1項)。

    損害賠償命令の申立ては、以下の事項を記載した書面を裁判所に提出して行います(同条2項)。公判手続きにおける裁判所の予断を排除するため、それ以外の事項は原則として申立書に記載することは認められません(同条3項)。

    1. ① 当事者および法定代理人
    2. ② 請求の趣旨および刑事被告事件に係る訴因として特定された事実、その他請求を特定するに足りる事実


    被害者等によって損害賠償命令の申立書が提出された場合、申立てを不適法却下する場合を除いて、裁判所は遅滞なく被告人へ申立書を送達します(同法24条)。

  2. (2)裁判所による審理|原則として4回以内

    損害賠償命令の審理は、被告人に対して対象犯罪の有罪判決の言渡しがあった場合に行われます(同法30条1項)。原則として直ちに審理期日が開催されますが、裁判長の判断によって別日が指定されることもあります。

    損害賠償命令の審理期日には、申立てをした被害者等と被告人の双方が呼び出されます(同条2項)。

    裁判所は、最初の審理期日において、刑事被告事件の訴訟記録のうち必要でないと認めるものを除き、その取調べを行います(同条4項)。

    口頭弁論をするかどうかは任意とされていますが(同法29条1項)、口頭弁論をしない場合には、裁判所は、当事者を審尋することができます(同条2項)。

    損害賠償命令の申立てについては、特別の事情がある場合を除き、4回以内の審理期日において、審理を終結しなければなりません(同法30条3項)。

  3. (3)裁判所による損害賠償命令

    裁判所は、審理を終結した後、決定によりその申立てについての裁判を行います。

    裁判所が決定書を作成した場合、その決定書は当事者に送達されます(同法32条3項)。
    裁判所が相当と認めるときは、決定書の作成に代えて、当事者が出頭する審理期日において主文および理由の要旨を口頭で告知することも認められています(同条4項)。

    決定書の送達後は異議申立期間に移行し、適法な異議申立てがない場合には、損害賠償命令の申立てについての裁判は、確定判決と同一の効力を有することになります(同法33条5項)。

3、損害賠償命令制度の手続き後の流れ

損害賠償命令に関する手続きの終了後は、そのまま裁判所の裁判が確定するか、または異議申立て等によって民事訴訟手続に移行します。

  1. (1)2週間で確定|強制執行の申立てが可能に

    損害賠償命令の申立てに関する裁判については、当事者への送達または審理期日における告知の日の翌日から起算して2週間以内に限り異議申立てが認められています(同法33条1項)。

    上記期間内に適法な異議申立てがない場合には、損害賠償命令の申立てについての裁判が確定して、確定判決と同一の効力が生じます(同法5項)。その結果、損害賠償命令がなされている場合、被害者は強制執行の申立てを行うことができるようになります(民事執行法22条7号)。

  2. (2)適法な異議申立てがあった場合|訴訟手続きへ移行

    上記期間内に適法な異議申立てがなされた場合は、通常の民事訴訟の手続に移行して(同法34条1項)、通常の民事訴訟手続によって損害賠償請求権の存否・金額が審理されることになります。

    適法な異議申立てがあった場合には、仮執行宣言が付された損害賠償命令を除いて、損害賠償命令の申立てについての裁判は効力を失います(同法33条4項)。

  3. (3)審理が長期化する場合も訴訟手続きへ移行

    裁判所は、最初の審理期日を開いた後に、審理に日時を要するために4回以内の審理期日で終結させることが困難と認めるときは、損害賠償命令事件を終了させる旨の決定をすることができます(同法38条1項)。

    この場合、損害賠償命令事件の審理は、通常の民事訴訟に移行することになります(同法38条4項、同法34条)。

4、その他犯罪被害者を支援する制度

損害賠償命令制度以外にも、犯罪被害者を支援するため、以下のような公的制度が設けられています。

  1. ① 被害者等通知制度
    被害者やその親族、代理人弁護士、目撃者等に対して、事件処理の状況や結果(起訴・不起訴、公判手続きの経過、判決、刑務所からの出所時期など)を通知する制度です。
    参考:「被害者等通知制度実施要領」(法務省)

  2. ② 被害者支援員制度
    全国の地方検察庁に配置された被害者支援員が、犯罪被害者からのさまざまな相談に応じる制度です。法廷への案内や付添い、事件記録の閲覧などの各種手続きのサポート、精神面・生活面・経済面等の支援を受けられる機関・団体の紹介なども受けられます。
    参考:「2. 被害者支援のための一般的制度 1 被害者支援員制度」(法務省)

  3. ③ 被害者ホットライン
    犯罪被害者が気軽に相談や事件の問い合わせを行うことができるように、全国の地方検察庁等に専用ダイヤルの「被害者ホットライン」が設けられています。
    参考:「被害者ホットライン連絡先」(法務省)

  4. ④ 被害回復給付金支給制度
    詐欺や高金利受領罪(出資法違反)などの犯人から没収・追徴した金銭を原資として、被害者に給付金を支給する制度です。
    参考:「被害回復給付金支給制度 Q&A」(法務省)

  5. ⑤ 被害者参加制度
    一定の重大犯罪について、被害者や遺族などが公判手続きに出席し、被告人質問などを行うことができる制度です。
    参考:「4. 公判段階での被害者支援 4 被害者参加制度」(法務省)


各種の支援制度は、犯罪被害者が経済的・精神的に立ち直るためのサポートとして役立ちます。利用を希望する方は、事件を担当する地方検察庁などにお問い合わせください。

5、まとめ

損害賠償命令制度は、刑事事件の被害者の方がスムーズに損害賠償を受けられるように、民事訴訟の特例として設けられた制度です。それ以外にも、犯罪被害者を支援するための公的制度が設けられているので、必要に応じてご活用の上、犯罪被害からの立ち直りに役立ててください。

犯罪被害その他の法律トラブルに巻き込まれた場合には、弁護士のサポートが役立ちます。ベリーベスト法律事務所にご相談いただければ、トラブル解決への見通しを示した上で、相手方との協議や法的手続きなどを全面的にサポートいたします。

法律トラブルの解決は、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスにお任せください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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