離婚時の車の財産分与はどうなる? 財産分与の方法と注意点
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静岡県の公表している人口動態に関する統計資料によると、令和元年の静岡県内の離婚件数は5834件でした。そのうち、浜松市内の離婚件数は1233件でしたので、静岡県内の離婚の約2割が浜松市内での離婚であったことがわかります。
離婚時には財産分与を行うことになりますが、婚姻期間中に車を購入した場合、車も財産分与の対象に含まれます。離婚後も引き続き車を利用したいと考える場合には、財産分与によって車を取得する必要がありますが、どのような方法で車の財産分与をすればよいのでしょうか。
今回は、離婚時の車の財産分与について、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスの弁護士が解説します。
目次
1、車が財産分与の対象となるケースとならないケース
車が財産分与の対象になるかどうかは、車が共有財産にあたるか、特有財産にあたるかによって扱いが異なってきます。以下では、車が財産分与の対象になるケースとならないケースを説明します。
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(1)車が財産分与の対象となるケース
財産分与は、夫婦が協力して維持・形成してきた財産を離婚時に清算するという制度です。
そのため、財産分与の対象になるのは、婚姻期間中に夫婦の協力によって維持・形成されてきた財産部分になります。このような財産のことを「共有財産」といいます。
共有財産に該当するかどうかは、財産の名義ではなく、夫婦の協力関係によって維持・形成されてきたかという実質面で判断します。婚姻期間中に購入した車であれば、基本的に財産分与の対象になると考えてよいでしょう。 -
(2)車が財産分与の対象とならないケース
財産分与の対象にならない財産のことを「特有財産」といいます。
特有財産とは、夫婦の協力とは無関係に維持・形成してきた財産のことをいい、主に以下のようなものが特有財産となります。- 独身時代に購入した車
- 独身時代にためたお金で婚姻後に購入した車
- 親からの贈与や相続によって取得した車
ただし、特有財産に該当する車であったとしても、車検費用、メンテナンス費用など車の維持費を共有財産から支出していた場合には、例外的に財産分与の対象に含まれることもあります。
2、【ケース別】車の財産分与方法
車が財産分与の対象に含まれる場合には、車も含めて財産分与を行っていくことになります。その場合の財産分与の方法としては、以下のような方法が考えられます。
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(1)車を売却する方法
夫婦のどちらも離婚後に車を利用する予定がない場合には、車を売却して、売却代金を分けるという方法があります。
車の財産分与においては、車をどのように評価するかで揉めることがありますが、車を売却してしまえば、「売却代金=評価額」になりますので、車の評価をめぐって争いになることはありません。
また、売却代金を分けるだけですので、名義変更などの面倒な手続きも不要となりますので非常に簡単な方法だといえます。 -
(2)どちらか一方が車を引き取る方法
夫婦のどちらか一方が離婚後も引き続き車を利用する場合は、車を引き取る方法で財産分与をすることも可能です。
その場合には、以下のような方法で評価するのが一般的です。- オートガイド自動車価格月報(自動車の取引価格をリスト化した冊子)
- 中古車買取業者の査定
双方が主張する評価額に大きな開きがある場合には、複数の業者の査定を参考にするなどして、お互いが納得できる金額を算出することが大切です。この方法による場合には、現に存在する財産を分けるだけでは足りず、代償金の支払いが必要になることもあります。
たとえば、共有財産として評価額200万円の自動車と預貯金200万円があり、夫が車の取得を希望する場合には、夫が車(200万円)、妻が預貯金(200万円)を取得することによって、公平な財産分与が実現できます。
しかし、共有財産が評価額200万円の自動車と預貯金100万円であった場合には、夫が車を取得すると、妻は100万円の預貯金しか取得することができず、不公平な結果となります。この場合には、夫から妻に対して50万円を代償金として支払うことによって、公平な財産分与を実現します。
3、車のローンが残っているときの取り扱い
車のローンが残っている場合には、ローンの金額と車の評価額の関係によって、財産分与での取り扱いが異なってきます。
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(1)アンダーローンの場合
アンダーローンとは、車の評価額が自動車ローンの残額を上回っている状態のことをいいます。
自動車ローンが残っている車は、単に車の評価額だけを財産分与の対象にすればよいというわけではなく、自動車ローンの残額も考慮したうえで、車の評価額を算定しなければなりません。
車がアンダーローンであった場合には、車の評価額から自動車ローンの残額を控除した部分が財産分与の対象となります。すなわち、車の評価額が200万円、自動車ローンの残額が150万円であった場合には、50万円が財産分与での車の評価額となります。 -
(2)オーバーローンの場合
アンダーローンとは、自動車ローンの残額が車の評価額を上回っている状態のことをいいます。車がオーバーローンの場合には、車を売却したとしても利益が出ることなくローンが残っているので、財産分与においては、当該車の価値はないものとみなされ、財産分与の対象にはなりません。
4、車の財産分与でトラブルにならないために行うべきこと
車の財産分与をすることになった場合には、財産分与によるトラブルを回避するために、以下のような対応が必要になります。
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(1)離婚届を提出する前に決める
財産分与は、離婚と同時に取り決めるのが一般的ですが、離婚後であっても財産分与を請求することはできます。
しかし、離婚後に財産分与を請求する場合には、離婚が成立した日から2年以内に請求しなければならないという期限がありますので、離婚後の新生活で忙しいと請求期限が経過してしまうリスクがあります。また、離婚後は、元配偶者と連絡を取ることが難しくなることもあり、車の査定や名義変更に協力してくれないこともあります。
そのため、できる限り離婚届を提出する前に車の財産分与についても取り決めるようにしましょう。 -
(2)車の名義人を確認する
車の財産分与をする際の基本的な注意点として、車の名義がどちらであるかの確認が挙げられます。
財産分与の対象財産は、車の名義のみで決めるわけではありませんが、車の名義がどちらになっているかによって、名義変更の要否など財産分与に必要となる手続きが変わってきます。財産分与後に慌てることのないように、財産分与前に車の名義人を確認しておくことが大切です。
自動車ローンが残っている場合には、所有権留保といって、車の名義人がローン会社になっていることもあります。この場合には、売却や名義変更にあたってローン会社の協力が必要になりますので、その意味でも車の名義人の確認は欠かせません。 -
(3)車の売却価格の査定をしておく
車が財産分与の対象に含まれる場合には、どの程度の金額になるのかを把握することが必要です。
購入した当初から時間の経過によって車の価値はどんどん下がっていきますので、現時点の正確な評価額を知らなければ適切な財産分与を行うことはできません。そのため、複数の中古車買取業者に査定を依頼するなどして、財産分与の話し合いをする前に、車の評価額を把握するようにしましょう。 -
(4)自動車ローンの残額を確認する
自動車ローンを利用して車を購入した場合には、現時点の自動車ローンの残額を確認することも必要です。自動車ローンの残額によっては、車が財産分与の対象にならないこともありますので、車の査定と一緒にローン会社に自動車ローンの残額を確認するようにしましょう。
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(5)離婚協議書を作成する
夫婦の話し合いによって、車の財産分与の方法が決まった場合には、口頭での合意で終わらせるのではなく、必ず離婚協議書を作成するようにしましょう。
また、合意した財産分与を確実に履行してもらうためには、離婚協議書を公正証書にしておくことも有効な対策となります。離婚協議書を公正証書にしておくことによって、万が一相手が義務の履行を怠ったとしても、裁判手続きを経ることなく、相手の財産を差押えるなどの対応が可能になるからです。
5、財産分与でトラブルになったら弁護士に相談しよう
財産分与では、車以外にも預貯金、不動産、株式、保険など対象となる財産に応じてさまざまな問題が生じます。また、離婚にあたっては、財産分与以外にも親権、養育費、慰謝料、面会交流などさまざまな取り決めが必要になってきます。
このような複雑な問題について適切に対応するためには、離婚問題に関する豊富な経験と知識が必要不可欠となりますので弁護士に相談をすることをおすすめします。財産分与で適切な金額をもらうことができれば、離婚後の経済的不安も少しは解消されるといえます。
財産分与をはじめとする離婚に関する問題でお困りの方は、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスまでお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています