個人間取引のトラブルは自己責任? フリマサービスの利用で気をつけたいポイント
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ネットオークションやフリマサービスのように個人間での取引が可能なサービスが普及したことで、さまざまなトラブルが発生しています。特にフリマサービスでのトラブル発生は著しく、静岡県のホームページでも「フリマアプリでのトラブルに注意しましょう!」と広く注意喚起しているところです。
個人間取引には、不要品がいくらかの金銭に換えられる、欲しいものが市価よりも格安で手に入るといった利点がある反面、商品の不具合や代金の受け渡しなどでトラブルが起きやすいという危険があります。個人間取引の利点を生かすためには、トラブルに発展してしまった場合の対応法も知っておくべきでしょう。
本コラムでは、フリマサービスを利用した個人間取引でトラブルに遭ってしまった場合の対処法について、浜松オフィスの弁護士が解説します。
1、個人間取引のトラブルの基本は「自分で解決」
フリマサービスの利用者は急増していますが、一方で、売り手・買い手のそれぞれが「個人」であるうえに取引のすべてがインターネット上でおこなわれるため、トラブルも増えています。
まずはフリマサービス利用におけるトラブルの現状と、フリマサービスの運営会社の基本的なスタンスをみていきましょう。
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(1)フリマサービス利用におけるトラブルの現状
独立行政法人国民生活センターの調べによると、国民生活センターと全国の消費生活センターに寄せられた、フリマサービスの利用に関するトラブルの相談件数は、平成28年度の途中で3330件でした。
前年度の同時期では2060件だったので、平成27~28年にかけて爆発的に相談件数が増加したことになります。
代表的なトラブルとしては次のようなケースが挙げられます。- 購入した商品が偽物だったので出品者に返品・返金を求めたが応じてもらえない
- 販売した商品を「偽物だ」と言われて商品代金を支払ってもらえない
- 商品購入の際に「受取評価後に発送する」と言われて従ったが商品が届かない
- たしかに商品を発送したが購入者から「商品が届かない」とクレームを受けた
このほかにも、未成年者が親権者に無断で高額商品を購入した、フリマサービスが用意している支払い方法ではない方法での支払いを求められた、禁制品・詐欺商材を購入してしまったなど、さまざまなトラブルが発生しています。
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(2)運営会社は解決してくれない
取引上のトラブルが多発していることから、フリマサービスの運営会社側は規約の強化やユーザーへの周知などの対策を強化しているところです。
ただし、運営会社はあくまでも「取引の場所・機会」を提供しているに過ぎず、商品の売買契約はユーザー同士が結んでいることになります。
トラブルが発生しても、基本的に運営会社が積極的にトラブルを解決してくれるわけではありません。
運営会社に期待できるのは、システムを通じて相手に連絡を図る、運送会社のミスなどで商品が届かない場合に代金の補償が受けられるといった程度です。
しかも、積極的に協力してくれるわけでも、必ず補償が受けられるわけでもないので、過度の期待はできません。
フリマサービスの利用において発生したトラブルは、原則として自己責任で解決しなくてはならないと心得ておきましょう。
2、当事者間の話し合いでまとまらない場合の相談先
相手が商品を送ってくれない、代金を支払ってくれない、違う商品や説明とは異なる粗悪品が届いたといったケースは、原則として自己責任で解決しなくてはならない問題です。
しかし、相手と連絡が取れない、理由をつけて返金に応じてくれないといったケースも少なくありません。
当事者間の話し合いでも解決できない場合は、誰に相談すればよいのでしょうか?
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(1)自治体の消費生活センターなど
各地の消費生活センターや消費生活窓口では、消費者トラブルを解決するために有効なアドバイスの提供や援助をおこなっています。
専門の相談員が対応するので、どのような行動を起こせば解決を図ることができるのかといった具体的な方法のアドバイスが得られるでしょう。
また、どうしても個人間では解決できない場合は、国民生活センター紛争解決委員会が仲介するADR(裁判外紛争解決手続)による解決も期待できます。 -
(2)管轄の警察署
代金を支払ったのに商品が届かない、明らかに価格に見合わない粗悪品が届いた、正規品だと偽って偽造・コピー商品が届いたといったケースでは、警察に届け出て刑事事件として解決できる可能性があります。
相手に対して「すでに警察にも相談済みだ」と警告することで、商品・代品の発送や返金が受けられるかもしれません。
ただし、警察が担当するのはあくまでも刑事事件としての部分であるため、警察から「商品を送るように」「返金するように」と命令できるわけではないので注意が必要です。 -
(3)弁護士
個人間で発生した消費者トラブルは、弁護士に依頼することで解決できる可能性が高いでしょう。
フリマサービスを利用していても、ユーザー同士の間には民法上の売買契約(民法555条)が発生しています。
弁護士に相談すれば、売買契約によって売り手・買い手にそれぞれどのような権利や義務が発生しているのかを正確に判断できます。
消費生活センターなどの相談窓口は、基本的に「どのように対処すればよいか」「今後はどうすればトラブルを回避できるのか」といったアドバイスを提供する機関です。
警察も刑事事件として対応するだけで、商品の発送や返金などをサポートしてくれるわけではありません。
被害に遭ってしまった方の立場に立ってトラブル解決に力を尽くすことができるのは弁護士だけです。
ただし、弁護士に解決を依頼した場合は弁護士費用の負担が発生します。
少額のトラブルを解決するために弁護士に依頼すると、かえって弁護士費用のほうが高くなってしまうことがあるので、依頼すべきかどうかを慎重に検討する必要があるでしょう。
3、弁護士に依頼した場合に期待できる解決法
フリマサービスの利用で発生したトラブルの解決を弁護士に依頼すれば、ここで挙げるような解決が期待できます。
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(1)相手との連絡・交渉
相手が連絡を無視している、商品を送ってくれない、返金に応じてくれないといった場合は、弁護士が代理人として相手に連絡を取り、法的根拠に基づきながら交渉を進めてくれます。
これまでに誠実な対応を取ってくれなかった相手でも、弁護士による連絡や交渉であれば不誠実な態度を続けるわけにもいかなくなるでしょう。
また、弁護士に交渉を依頼することで、自分自身で相手と連絡・交渉することによる手間やストレスから解放されることにもなります。 -
(2)法的手続による解決
交渉による解決を目指したにもかかわらず、相手が商品の発送や返金などを拒む、あるいは無視を続けるといった場合には、弁護士に依頼することで、法的手続による解決を期待することができます。
消費者トラブルは、裁判所の調停・訴訟といった手続きによる解決が考えられますが、個人での対応は難しく、手間もかかってしまいます。
弁護士に対応を依頼することで、裁判所に提出する書類の作成や証拠集め、期日における出廷も一任できるので、解決までの負担を大幅に軽減できるでしょう。
4、フリマサービスでトラブルに遭わないために気をつけたいポイント
フリマサービスの利用におけるトラブルは、解決までに時間や手間がかかってしまうケースも少なくありません。
トラブルに対応している間は、フリマサービスの利用を控えてしまったり、対応に時間や手間を割いてしまったりすることで余計なストレスも抱えてしまいます。
トラブルに遭った際の対処法も知っておくべきですが、何よりも「どうすればトラブルに遭わないか」を重視するべきでしょう。
フリマサービスでトラブルに遭わないために気をつけたいポイントを挙げていきます。
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(1)自己責任を念頭に慎重な取引を心がける
フリマサービスの利用で発生したトラブルは、原則として自己責任で解決しなければなりません。
特に、高額商品を出品・購入する際は、本当にフリマサービスを利用して取引するのがベストなのかを慎重に検討するべきです。
必ずリスクが伴う取引であることを覚悟し、トラブルを避けたいなら正規の販売店で購入する、リサイクルショップなどで売却するといった方法を選択しましょう。 -
(2)可能な限りエスクローサービスを利用する
大手のフリマサービスでは、基本的に「エスクローサービス」によってでしか取引ができないようになっています。
エスクローサービスとは、商品を売買する際の取引の安全性を保証する仲介サービスです。
代金のやり取りはフリマサービスの運営会社が取り持つため、出品者は代金支払いを確認したうえで発送でき、購入者は商品が発送されなければ返金を受けやすくなります。
もしエスクローサービスの利用が選択式であるなら、可能な限りエスクローサービスを利用して安全な取引を目指しましょう。 -
(3)ユーザーの評価や取引履歴を確認する
フリマサービスでは、ユーザーの評価やこれまでの取引履歴が確認できます。
ほかのユーザーからの評価が低い場合は、過去の取引内容からどのようなトラブルがあったのかを確認してみましょう。
高評価だとしても安全だとは断言できません。
フリマサービスを悪用する悪徳業者などは、他人のアカウントを買い取ったり、不正な手段を使ってアカウントを乗っ取ったりして、高評価のユーザーを装うことがあります。
評価などの目に見える情報を頼りにしても、やはり最終的には「トラブルが発生しても自己責任」だという覚悟は必要でしょう。
5、まとめ
フリマサービスの利用者が増えるなか、個人間取引におけるトラブルも激増しています。
トラブルが発生しても運営会社による解決は期待できないので、自己責任で解決しなくてはなりません。
代金を支払ったが商品が発送されない、商品を発送したが代金を支払ってくれないといったケースでは、詐欺事件として立件できる可能性があるので、警察への相談・届け出が有効です。
ただし、刑事事件にならない内容であれば警察に相談しても解決できないので、自治体の消費生活センターや弁護士への相談をおすすめします。
フリマサービスの利用に関するトラブルでお悩みであれば、ベリーベスト法律事務所 浜松オフィスにご相談ください。
代理人としての交渉や法的手続によってトラブルの解決に全力を尽くします。
「どうやって解決すればよいのか?」というお悩みに対するアドバイスも可能なので、まずはお気軽にご一報ください。
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